劇場公開日 2017年7月8日

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「ベルリン市民もまた軟禁被害者だった、当時の目線が見えてくる」ヒトラーへの285枚の葉書 Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ベルリン市民もまた軟禁被害者だった、当時の目線が見えてくる

2017年8月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

誤解を恐れずに言えば、ベルリンを舞台にした「この世界の片隅に」(2016)でもある。というのも数多くの反ナチス映画は、その犯罪性・残虐性などのインパクトにフォーカスされているので、ドイツ人の労働者階級の生活や感覚は見えにくい。それに対して本作は、市井(しせい)の人の目線で見た本音が描かれている。

ベルリン市民もまたナチスに軟禁された被害者だったという映画である。

主人公オットーとその妻アンナのもとに、息子ハンスが戦死したという通達が届く。悲しみの中で、ある日、オットーはヒトラー批判のポストカードを手書きで作り、ひそかに街中に置く。そしてその枚数は増え続け、ゲシュタポの捜査がはじまる。

原作小説「ベルリンに一人死す」は、ドイツ人作家ハンス・ファラダの作品で、第二次世界大戦終戦直後の1947年に発刊されている。当時のセンセーショナルな反応は、戦後初の"反ナチス小説"だったのと、ゲシュタポの公式記録をもとに書かれた実話ベースだったから。

この映画、終始、違和感を感じてしまう。それはセリフが全編、英語だから。そのミスマッチがリアリティを欠いてしまっている。これなら日本語吹替でも変わらない(笑)。

これにはワケがあって、この有名な原作はなんどもドイツ国内で映像化されているため、"いまさら"なのである。本格的な映画化であるにも関わらず、スポンサーが集まらず、結果的に2009年に小説が発刊された英語圏から火が付いたという格好。日本語翻訳版も2014年にようやく発売されている。

ともかく実話なので、初見であれば新鮮に感じることは間違いない。

(2017/7/18 /ヒューマントラストシネマ有楽町/シネスコ/字幕:吉川美奈子)

Naguy