劇場公開日 2017年9月23日

  • 予告編を見る

「人と人は不思議な縁で繋がり、あなたの周りの為になっている」ナミヤ雑貨店の奇蹟 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5人と人は不思議な縁で繋がり、あなたの周りの為になっている

2018年2月25日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

幸せ

東野圭吾史上最も泣けると言われたベストセラー小説の映画化だが、見始めの印象は、微妙…。あざとくお涙頂戴を狙ってるのは見え見えだし、エピソードも単調。
やはり東野圭吾はサスペンス/ミステリーがいい。
でも見ていったら、とてもいい!…ってほどではないにせよ、そう悪いもんでもなかった。

80年代。“ナミヤ雑貨店”にはお悩み相談口があり、多くの人から悩みや相談を寄せられ、店主が回答やアドバイスを送っていた。
現代。とっくの昔に空き家になったナミヤ雑貨店に、強盗を働いた若者3人が身を潜めようと侵入し…。

身を隠す為だけに侵入した雑貨店で、3人に不思議な体験が起きる。
突然、郵便口から手紙が投函される。
気になってその手紙を開いてみると、それは何かの悩み相談の手紙で、日付はなんとなく80年代!
何かの悪戯? それとも…?

過去と現在を繋ぐ不思議な雑貨店。
こういうファンタスティックな設定は嫌いじゃない。
お悩み回答で人生を変えた人々。
単調と思った各々のエピソードが、ある縁で繋がっている事が分かっていく。グリーンリバー母娘のエピソードはなかなか胸打った。
それは、若者3人と、彼らと訳アリの女社長も。
伏線など鮮やかで巧みな展開!…ってほどでもないが、心地よく優しいものであった。

ひょんな事から店主に変わって手紙に回答する3人。
施設で育ち、決して恵まれた望んだ人生を過ごしていないであろう3人が、手紙に不器用ながらも答える内に、自分の人生や生きている意味を見つめ直していく。
彼らがちゃんと罪を償うシーンも描いて欲しかったが、山田くんの好演に好印象。キネ旬新人賞を獲っただけあって、役者としてのキャリアで特別な作品になっただろう。
若手・実力派・ベテランの顔触れの中、やはり西田敏行の温かく優しい人情味溢れる演技が印象に残る。
雑貨店のセットや町のロケーションもノスタルジックを煽る。

難点や詰めが甘い点も目立つ。
犠牲になった魚屋ミュージシャンには申し訳ないが、無謀な行動としか思えない。
雑貨店に身を隠している筈が、3人共、電気点けて大声で喋り過ぎ。

まあでも、見終わってみれば、そう悪くないヒューマン・ファンタジーだった。
人と人は不思議な縁で繋がっている。
それは時として、あなたの人生の、周りの人生の為になっている。
感謝は伝えられないかもしれない。
だからこそ、誠実に生きる事こそ、せめてもの…。

近大