光(大森立嗣監督)のレビュー・感想・評価
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止めようがない心の闇
「光」というタイトルの映画を観るのは今年二度目だ。ひとつ目は永瀬正敏が目が見えなくなっていく写真家を好演した映画で、カンヌ映画祭でスタンディングオベーションが10分も続いたことで有名な傑作である。
そしてもうひとつ目が本作だ。世界観が全く違うので単純に比較することはできないが、永瀬正敏の「光」は盲目の登場人物たちによって浮かび上がる、文字通りの光を描いており、本作は逆に影を描く。光が強いほど影は濃くなり、やがて闇となる。
かつて暮らしていた、月光が怪しくも美しく海面に反射する島。そこには貧しさだけがあり、貧しさ故にむき出しになった原始的な欲望がある。虚飾に満ちた都会生活では、その記憶は光を当ててはいけない闇の記憶だ。
出してはいけないものを無理に引きずり出されることで、闇の記憶とともに心の闇が溢れ出す。一旦溢れ出した闇はもはや止めようがない。闇を葬り去るには自分が殺されるか、または殺すしかないのだ。
かくして登場人物たちは一本道のストーリーを進むことになる。耳障りな不協和音みたいなBGMは、闇の叫びの周波数を持っている。これによって観客は登場人物たちと同じ不快感を共有することになる。誰もが心に闇を抱えている。日常生活に紛れて向き合おうとしなかった闇を、この映画が引きずり出す。観客は否応なしに自分の闇と向き合わざるを得なくなるのだ。
井浦新と瑛太は闇を抱えた人物を存分に演じていたが、長谷川京子は役者不足。怪物みたいな心の強さを持つ美しい女を演じることができる女優は他にいたはずだ。橋本マナミは好演。こちらは普通の主婦が普通に抱える生活の物足りなさを、普段着で演じた。裸の後ろ姿の下がり気味のお尻が、生々しい猥雑さを感じさせる。
瑛太の怪演よかった。
全体的なストーリーの流れは原作に近かったのですが、
演出と音楽は、狂気と暴力が前面に出過ぎていたような気がします。
そんな中、瑛太の怪演はすごかったです。
たすくの孤独感、いろんな事をあきらめたような虚ろな目、
ゆき兄に振り向いてほしいのに悪態をついてしまう不器用さ、
愛情に飢え愛を乞うような表情、などなど
原作を読んで想像していた、たすく像よりもさらに色濃く表現され
ていました。
まだまだ引き出し多そうな俳優さんです。
元を辿れば人もまた獣
大森立嗣監督最新作は、三浦しをんの同名小説の映画化。
同監督の『まほろ駅前多田便利軒』も三浦しをん原作だが、
あののんびりふんわりテイストの映画を
期待するとアワワワワ……となるので要注意。
まあネタバレ指定で書いても遅いんですけどね……。
...
いやあ、出演者みんな怖い怖い、
怖い怖い映画でしたね(淀川さん風に)。
信之の、真っ暗で無感情な瞳やシャープな風貌。
演じる井岡新の表情にはどこか鮫を思わせる所があって、
ゆらり泰然としているように見える時でも突然
歯を剥き出して猛り狂いそうな恐ろしさを感じる。
少年の頃に己の獣性に気付いてしまい、そこから
いわゆる“普通”でいることが難しくなってしまった彼。
輔との再会でじわじわ獣性が解放されていく様が怖いし、
逆に美花には情けなく翻弄されるばかりで、男ながらに憐れ。
対する瑛太は逆に完全に感情が振り切れているが、
身勝手極まりないのにどうにも憎み切れない。
誰も助けてくれず誰も構ってくれない。信之を除いては。
彼はあんな形で他者と接点を持つ術しか知らなかった
のだろうし、殺される直前に「ずっとこうして
欲しかった気がする」と微笑むシーンなど、
ああ、生まれた時から彼はこうして生きる/死ぬ道しか
用意されていなかったのかなと哀しい気持ちになった。
橋本マナミも「バラエティに出てるなんかエロい感じ
の人」くらいの印象しかなかったが(印象酷いなオイ)、
主演陣のなかでは一番“普通”の役として活きていたし、
日常から非日常へと感化されていく重要な役どころ。
あの最後の表情。夫を見据える眼差しや、
薄く開いた唇からは彼女の感情が全く読み取れず、
そこが僕は物凄く恐ろしかった。
彼女が夫を警察に突き出さなかったのは娘の為を思ってだろうか。だが彼女の眼は、まるで異質な、
見知らぬ生き物を警戒するように、突き放した眼差しで。
ただ、全ての発端である美花のキャラクター
だけ浮世離れしていて理解が難しかったかな。
人気女優になっていたという設定自体がやや
飛躍し過ぎにも思えるし、長谷川京子よりも
少女時代を演じた紅甘の方が妖艶さでも
獣性でもヤバさと説得力があった気がする。
だが全体を通して一種の狩り(遊び)として
男を弄んでいるような不気味さは感じられたし、
登場人物の中で一番早く自分の獣性に気付いていて、
自身でも制御できないほどそれに忠実だったのだと感じた。
...
狼に育てられた双子の像。
元を辿れば人もまた獣であって、
幼少の頃に獣として育ってしまった者は、恐らくは
自分の中の獣をずっと認知して生きねばならない。
「生きるために生き物を殺すんだよ。」
風船で再現された屠殺場にて、信之は幼い娘に語った。
生きることは本当は残酷で、自分が生きようと
する以上は他の何かを殺さなくてはならない
(人の場合それは生物学的な死だけに限定もされない)。
その原理は生き物として至極当たり前だが、人は普段、
その残酷さや血生臭さから目を逸らして生きている。
だが、どうしてもそれに気付かざるを得なくなる時がある。
この映画での津波や誘拐や虐待など、個人が全く
回避できる余地のない外部からもたらされる暴力
に対して基本的に人は無力で、しかもそんな暴力は、
実は一見平穏に見える日常のそこかしこに転がっている。
人は大抵、「そんな怖い事は自分の身の周りには
起こらない」と考えがちで、自分や自分の家族に
危害が及ばない限りは無関係を決め込もうとする
(虐待される幼い輔を誰も助けなかったように)。
しかしいざ自分や自分の近しい人々が暴力に晒された時、
人は世の中がそれまで考えていたような平穏な場所
ではなかったと気付き、同時に自分もその暴力に
対抗する必要があると感じるのだと思う。
...
勿論、自分の獣性の赴くまま生きるような者は、
人間社会の中で生きることなどままならない。
人が獣であることを見て見ぬふりをするより、
それを認めた上で、いざという時の警戒は怠らず
人として生きる努力をしなければいけないのだろう。
自分はありがたいことにそんな事件にも境遇にも
見舞われたことは無いけれど、この作品を観ると、
「人らしく生きるのは本来努力がいるものなのかも」
と、考えずにはいられなくなる。
いやはや負方向の意味で心に残る作品でした。
体力が十分な時に観た方が良いと思います。
難解ゆえスコアを付けるのが難しいが、
観て損ナシの3.5判定で。
<2017.11.25鑑賞>
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余談1:
幼いあの娘は大丈夫なのだろうか……最後の彼女の姿は、
人としてどこかが壊れてしまったのではと心配でならない。
子役の演技、見事でした。
余談2:
タイトル『光』とはどういう意味か?
人を狂わせるほどの陽光や月光。
自然と足を赴かせてしまうもの=本能?
いや、紺色の文字で描かれていたのなら
イメージとしては月光に寄る?
輔のような狼に育てられた少年がその境遇から
抜け出す為の光=紺色のカーテンを背景にした信之?
はい、分かりませんッ! さらばッ!(逃げ)
瑛太が良かった
この映画は公開を知った時から是非観たいと思っていたのですが、評価レビューが低いので、「あまり期待しない」と思いつつ、映画館へ行きました。
主人公の井浦新よりも英太の役どころが面白く、はすっぱな感じが、汚いアパートとともに私的には惹かれるものがありました。
主人公と幼馴染が大人になって再会するくだりは・・普通過ぎてつまらなかったです。
映画中時々出て来る大きなサウンドは、効果音になっているのでしょうか?
(以下、ネタバレにはならないと思います)
「あんたのことを信じることが出来たら・・」というシーン、また観てみたいです。
不条理を楽しめ!大人の作品!
誰もが幸せに楽しく生きたいと思っている。でもどうしようもないシガラミが、そして過去のトラウマがそれを許さない... そんな大人のどす黒い世界がこの作品の背景。どこまで行っても、どうあがいても安息に辿りつけない、そんな息詰まるような感覚は役者さんたちの熱演のおかげ。不条理ワールドを存分に楽しもうと言う大人の作品だと感じました。この作品、私は嫌いじゃないな。
音響?女優?
この監督の作品、第1作から見てるだけに残念。
残念1、音響?音楽?
ぶち壊している。2020東京オリンピックの競技場みたい。アーティストの名前だけで調和無し。
残念2、女優のダブルH、学芸会!
えげつなさがそそります
先日みた「彼女がその名を知らない・・」
と同じく、あんな女のどこがいいんだってやつ。
まあ、それは置いておいて。
神秘的ですらある島の風景のなかで
音楽も登場人物も、みな、えげつない。
でも、欲を言えば
もっともっと汚らしく描いて欲しかったかな。
汚い物好きな私としては。
瑛太さん、いいなぁ。
島から抜け出せない大人達
故郷の島の人間と出来事にガチガチに絡められ、抜け出せない大人達がただただ飲まれて沈んでいく様子をただただ観ているしかない。
起きて欲しくないことが次々起こってひたすらに暗いストーリーはかなり好き。
虐待、強かん、殺人、震災と容赦ない暴力が小さな島と子供達に降りかかっていくのが痛い。
でもそれに諦めたように、大きく苦しみもがくことをあまりしない3人に不自然さを覚える。
この映画で一番悲しいのは輔だと私は思った。
頭のネジ何本も飛んだような笑い方や咆哮をあげる彼に、親から暴力を受けながらも秘密を秘密として守りユキ兄に引っ付く子供の顔が重なって辛くなる。
20年以上経っても歪んだ執着をして心の拠り所にして、それでも愛されず笑いながら死を受ける姿があまりにも残酷だと思った。
大人になっても父親に怯え言いなりになってしまうのがリアル。
信之と美花に関しては本心があまり見えて来なかった。
殺害現場の写真ならまだしも、ただの死体の写真が自分たちの罪を大きく証明するものとはどうしても思えず、その反応が過剰に思えた。
信之の重すぎる愛情にも少し疑問。
まあ中学生の頃の強烈すぎる体験からと思ってしまえば良いんだけども。
あの時の体験から抜け出さないことを敢えて選んでいるような行動を取るのがまた面白い。
演出面が特徴的だった。
所々で印象的で強い画が挟まれ、爆音エレクトロBGMが鳴り響くのでちょっと集中力削がれるしだいぶキツかった。
ストーリー自体に不快な要素が多いけどその演出でさらに不快さを増してくる。
これでもかってくらい気持ち悪く感じさせるのは良いと思うけど、さすがにテンポが悪く思えたのが残念。
最後狂ったように「パパパパパパパパ!!」とはしゃぐ椿がどうしようもなく気持ち悪かった。
イマイチ
宣伝と予告を観て観に行ってきましたが、完全期待ハズレでした(T_T)
ストーリー自体に面白味が全くない。
25年前に離島で起きた殺人事件を遺体が写ってるだけの写真で脅迫しても何の脅威も感じないし、脅迫されてる方を見ててもそんなに焦ってないから緊張感が全く感じない。
音楽も五月蝿過ぎて雑音にしか思えない。
瑛太の演技は良かったと思うけど、大した見所も無く終わりました。
唯一印象に残ったのは橋本マナミのおっきいおっぱいと舌でペロペロ舐め回すシーンがエロくて良かったくらいでした。
重くない・・・
初めに思ったのが、演技下手!
25年後の何とか?だが、思ったよりもそれぞれの思いが重い様には感じない・・・。
橋本マナミの役どころが一番人間的に重いように感じられた。
当事者の3人はそれほど事件に拘っていたようには感じられない。
親父の出現が無ければ、大きな展開も無かったろうに、と。
変に大きな音量で音楽が流れるが、何回も睡魔に襲われてしまった映画であった。
パパパパパパパパパ
まだ起きていない脳のままで鑑賞したのでうまく飲み込めなかった。一寸残念ではあるが、一応感想を。
勿論、原作未読なのでラストの相違は不明。アバンタイトルのBGMがEDMなのでそのけたたましさとおどろおどろしい雰囲気を醸し出す演出に、この先の不穏な想像が掻きたてられるストーリースタートである。R15指定なのではあるが、まぁ初っぱなの未成年レイプシーン、その先の濡れ場等々も鑑みてのことではあろう。
多分、テーマは『従属』。それが連鎖している様を如実に生活を蝕みながら、どうしようもない『業』の中で突き進んでゆくシークエンスである。井浦新、瑛太、ハセキョウはそこそこの演技であるが、橋本マナミのバストトップ無しは頂けない。そうでなくても何だかフワフワした演技だし、まぁ素人ぽさがこの人のキモなんだろうけど、ならば裸一貫で頑張れっていいたいね。疲れたヒップのバックショットなどは写真週刊誌でイヤと言うほど披露しているのだろうから、映画ならばもっと本腰入れて欲しいというのが本音である。
それと対照的に、今作、とにかく子役が大変光っていた。特に5歳の女の子、ツバキちゃんは大変素晴らしい演技である。この子がでるシーンは全て持って行く。特に母親に叱られているシーンはとてもリアリティと哀しさを力一杯表現していて目を見張るばかりだ。今後の映像での活躍を期待したい。
結局、はからずも事の顛末を知ってしまった妻、女のために弟分をも殺した夫、共々、この先の顛末には明るい未来は感じられないバッドエンドで終わるのが正しいと思う。色々考えさせられる、特に瑛太の父親役の平田満の演技に、自分の父親を重ねてしまうことは、今作品のシンクロ率の高さを感じざるを得ない。文学作品の映画化は非常に助かると改めて心に刻んだ作品である。
いやはや
重すぎた。新、瑛太ハマり役。ただ、原作読んだので、そこで止めておけば良かったという気持ち。この映画には不要では?と思われるシュールな映像が多すぎるし、しょっぱなの子役の演技に戸惑った。そして、原作に沿った内容(部分的な省略あり)だったので、特に映画で美流必要性を感じなかった。原作知らなくて、いきなり観た作品なら、感じ方は変わったかもしれない。ただ、私は三浦しをん氏の文章のみで十分感じられた。
重い
大事な人に会う直前に見たので、見終わってテンション上げるの大変でした。
橋本まなみの濡れ場以外の演技がぎこちなく残念。以前のドラマよりはましかと思いますが、濡れ場のため選ばれたと思えばしょうがないか...
長谷川京子は少女の頃から、マネージャーの言ってた通りに男を翻弄していきてきたのかな、純朴な島の少年はそれに気づかず離ればなれになり、当時の気持ちをひきずったまま今を迎えてしまったよう。
瑛太と井浦さんとのシーンは後半へいくほど心に響きました。
ためらいつつも最後は殺すしかなかったのか、スコップをぐらつかせてるシーンで、一瞬明るい方向へ向かう光が見えた気がしたのですが。
いっそ災害が起きず、そのまま島で暮らせてた方が幸せだったのかな。
椿ちゃんは今は笑って過ごせてるけど、どんな大人になるのか...何か起きそうで恐い。
月の道
中学生カップルと歳下の少年が暮らす離島が津波に襲われて壊滅した25年後、島での事件を知る歳下の男が元カップルを脅迫する話。
序盤の島での少年期で生々しさとグロさと闇に惹きつけられる。
現代の話も同様の空気感が引き続き、大人になったことで起こることも加わって良い意味で嫌な空気が終始漂っていて良かったけれど、最後が自分的には物足りず。
空気感を変える突然の大音量だったり、全体的にゆったりとした間だったり、ハマっている部分もあるけれど多用し過ぎて時に醒めたり冗長に感じたし、25年後のパートに移って少しの間誰が誰だか判らない状態で話が進んだりと、ちょっと狙い過ぎてしまっている感じを受けたのが残念。
共感
始まりから終わるまで とにかく心臓が
バクバクでした。
もし人間を焼いて湯がいて しても
あそこまでの アク(悪)が出せるのか
っという しみ込んだ闇。
井浦新さんと瑛太さんのからみ
悲しさを感じました。
そして共感してしまう自分の闇にも
気づかされました。
すごいものを見たとしか今は言えません
試写で見せていただき悶々と考えていたのですが、感想。。。ぐちゃぐちゃのまままとまりません。
「すごいものを見てしまった」ことはわかるし、シーンや表情でここが良かった、怖かった、気持ち悪かった、苦しかった、というのはいえるのですが。
感想というと。。なんだか消化不良のまま胃の中でごろんごろんしたまま重くなっていくようで、まとまりません。
重くて、陰鬱で、人の業を平たんに淡々とぶっとおしで見せつけられて、考え込まされています。
。。。おそらく何度か見てようやく、好き嫌いも含めて腑に落ちるのではないでしょうか。公開心待ちにしております。
感想まとまらないのに何ですが、「すごいから見てほしい」とだけ。
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