劇場公開日 2017年6月10日

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「乗る前から結果がわかっていても楽しい、ジェットコースター」昼顔 Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5乗る前から結果がわかっていても楽しい、ジェットコースター

2017年6月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

そのタイトルが2014年の流行語にもなった、テレビドラマ「昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜」(2014)の劇場版である。

本作は50年前のカトリーヌ・ドヌーヴ主演でヴェネチア映画祭金獅子賞の「昼顔」(1967)をオマージュしている。貞淑な妻が昼間に隠れて売春をしているというオリジナルに対し、普通の主婦が昼間に不倫をすることを"昼顔"という言葉に懸けた。

さて完結編となる本作は、放送から3年。俳優・斎藤工の出世作であり、メジャーになった今だからこそ映画化が実現したのだが、ストーリー設定も同じ3年後になっている。

連ドラを見ていなくても、問題なし。むしろ登場人物も絞られて、シンプルにまとまっている。本編は、複数の不倫がパラレルに進行していたが、劇場版は上戸彩が演じる"木下紗和"と、斉藤工の"北野裕一郎"、その妻"乃里子"の三角関係の再燃で盛り上がる。

不倫問題は、巻き込まれた当事者とその周辺は大変だが、部外者は好奇心だけの、実に下世話なテーマにすぎない。社会通念や法的罰則がなければ、自然な"純愛"であり、見方によっては、"生物学的な繁殖活動"に過ぎなかったりする。人間界では、ケモノ呼ばわりされるわけだが…。主人公の"北野裕一郎"の設定が、"生物学の先生"であるのは、"聖職者"とのミスマッチを象徴している。

夫と離婚した紗和は、誰にも気づかれない海辺の町で一人暮らしをしている。そこに大学の非常勤講師として働いていた北野先生が、講演のためにやってきてしまう。

もうだいたいエンディングは読めるわけだが、だからといってネタバレ厳禁。とてもよくできた構成で、乗る前から結果がわかっていても楽しい、ジェットコースター展開なのである。不倫にハッピーエンドは期待できず、ラスト30分の"乗り心地"は、とんでもないアトラクションだ。2人以上で観れば、きっと観賞後のネタにつきないと思う。

なんといっても上戸彩の演技に圧倒される。わきあがる情念を理性で抑え込む演技は、切なく伝わってくる。斎藤工もしかり。こういう役どころが逆に魅力を引き出している。

西谷弘監督は基本テレビドラマの演出家なので、ドラマの劇場版の演出が多い。福山雅治の「ガリレオ」シリーズとその劇場版「容疑者Xの献身」(2008)、「真夏の方程式」(2013)。織田裕二の「外交官・黒田康作」シリーズとその劇場版「アマルフィ 女神の報酬」(2009)、「アンダルシア 女神の報復」(2011)など。いずれもスタイルは単発完結で、本作も気持ちいいくらいスッキリと完結する。

(2017/6/10 /TOHOシネマズ日本橋 /ビスタ)

Naguy