劇場公開日 2017年3月25日

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「特殊能力のひとつひとつが伏線になっていてお見事です」サクラダリセット 前篇 Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5特殊能力のひとつひとつが伏線になっていてお見事です

2017年3月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

知的

ライトノベルにありがちな"特殊能力者"+"タイムリープ"。特殊能力者が出てくると"X-Men"パターンになりやすく、映像も派手なVFXに囚われる傾向にあるし、"タイムリープ"は言わずもがな。プロットをひっくり返す、便利な飛び道具に使われるだけ。どうせあるある話かと思いきや、これはタイプの違う、眉村卓っぽい青春ミステリー。

春埼美空の"リセット"と、浅井ケイの"記憶保持"。男女2人の能力が揃って初めて、過去の出来事を変えることができるという設定が見事だ。

特殊能力のひとつひとつが伏線となっていて、よく練られている。能力者の数だけ伏線がぎっしり詰まっていて、その組み合わせがこの作品のキモになっている。2部作とはいえ、映画という短い尺の中で、ひとりひとりの能力を説明しながら、ストーリーを進行しなければいけないのは厳しいはずだ。

詰まりすぎているので一瞬、"アレっ?"と置いてきぼりにされないように観なければいけないのだが、観終わってから、反芻してみると結構な満足感である、全7巻の小説はもっと充実しているのかもしれないが、映画としてはよくまとめられている。前篇でひとつの事案が解決するので、プロローグとして完結しているのがいい。

主演の野村周平以外は、けっしてメジャーではないキャスティングで、ヒロインの黒島結菜(ゆいな)のフツーっぽさが逆に新鮮でいい。日本映画は良くも悪くも東宝のトレンドに毒され過ぎているからね。

監督・脚本の深川栄洋が、この手の作品を撮るのは意外な感じがする。「先生と迷い猫」(2015)、「トワイライト ささらさや」(2014)、「神様のカルテ」(2011/2014)と・・・ヒューマンドラマが多いので、後篇に心情描写をキープしているのか。ヒロインの春埼美空と、主人公の浅井ケイのビミョーな関係の進展に期待したい。

(2017/3/25/ ユナイテッドシネマ豊洲 / ビスタ)

Naguy