劇場公開日 2017年6月10日

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「前作を越える感動と興奮」KING OF PRISM PRIDE the HERO ムスカさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0前作を越える感動と興奮

2017年6月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

笑える

興奮

「KING OF PRISM by Pretty Rythem」(通称キンプリ)は、
2016年1月に公開された。
低予算ながら綿密に作りこまれたストーリーと、
「応援上映」という新しい映画の鑑賞スタイルが話題となり、
公開から1年以上のロングランヒットとなった作品だ。

その続編となる「KING OF PRISM by Pretty Rythem」が
2017年6月10日に公開となった。

前作は面白かった。
意味が分からないのになぜか泣いてしまうような力強さがあった。
正直前作を超えるのは難しいだろうと思っていた。

訂正する。
今作は、前作を遥かに超える感動と興奮が詰まっている。

前作がドライブくらいの疾走感であれば今作はジェットコースターだ。

今作は、台本が前作の2倍となるほどのボリュームを、前作を10分だけ上回る69分におさめている。
70分のアニメとは到底思えない。
内容があまりにも蜜で、5時間の長編アニメーションを見た気持ちになる。

それは情報量が多いとも言える。
しかしストーリーの主軸がブレているわけではない。
ストーリーは複雑に絡み合うが、それぞれクライマックスに向けて帰結していく。
全てのカットが重要なもので、無駄なものが一つもない。
それが70分という短さでこれだけの纏まりを見せている要因だ。

キャラ立ちのよさもこの作品の魅力のひとつだ。
時には突き放し、時には悩み、
時には仲間と励ましあいながら成長していく。
支えあうというのは、それぞれの役割を果たすということでもある。
個性豊かなキャラクターは出来ることを一生懸命に行いながら、
「プリズムキングカップ」という大会に挑む。

その間のプリズムショーがまた圧巻だ。
プリズムショーは何でもアリの全く新しいジャンプだが、
その面白かっこよさに圧倒されてしまう。
そして最後は感動的なジャンプと、序盤からのキャラの成長を感じて、
辿り着いた強さに涙してしまうことだろう。

この映画は監督である菱田正和の集大成であるといえよう。
菱田監督は、昨年亡くなったアニメーション監督井内秀治が
総監督を勤めた「超魔神英雄伝ワタル」という作品に関わっていた。
それ以降も井内秀治とともにキンプリの前身である
「プリティーリズム」テレビシリーズの監督を手がけた。
監督が井内秀治から受けたものは多くあったに違いない。
今作は、ワタルや菱田監督が務めた監督作品の多くからオマージュを受けている。
昔からのファンであればニヤリとするエッセンスが盛り沢山だ。
かと言って知らない人が置いてけぼりにされるのではない。
いずれも物語の根幹に関わる重要なものではなく、
作品を知っていれば分かる、感動するようなエッセンスの入れ方だ。
それが知りたくて過去作品を見たくなってしまう、
視聴者の探究心を擽るようなエッセンスの入れ方が秀逸だ。

見れば見る程歯ごたえが出てくるような作品だ。
一度で全てを理解できる人はいないだろう。
2回、3回と見ていく度に新たな発見があり、
その発見の「意図」に気づき、監督の仕掛けた物語がようやく理解できる。
張り巡らされた物語を理解したとき、
この作品の真の奥深さに気づくことができるだろう。

ムスカ