劇場公開日 2017年1月21日

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「本当の信仰とは」沈黙 サイレンス SUTTYさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0本当の信仰とは

2017年9月2日
iPhoneアプリから投稿

原作を読まずに観た。
信仰の自由を保証しない時代の出来事。
踏み絵を強要するのに拒否する信者。
信者に対する暴力を神父に見せ棄教をせまる。
キリスト教は偶像崇拝を否定している。
キリスト教の示す偶像とは、皇帝の銅像などだろう。
でも、踏み絵もまた、偶像に過ぎないのでは。
イッセー尾形扮するイノウエは形式的な、簡単な手続きだけを求める。
心の中までは侵害しない、と。

キリスト教を布教する目的は、「野蛮人を文明化すること。」
という建前はともかく、布教とともに、植民地化したり、神父自身が人身売買する商人を黙認して各国を訪れたりしたのも事実の一つ。

日本を本作では、「沼」と呼ぶ。
沼には木は育たず、花も咲かないと。
都市化が進む西洋に対し、自然の中で暮らす日本人にとって、なんとも皮肉な喩えに思われた。
昔の日本人の信仰とは、八百万の神々に対してもつ感情であり、感謝であり、願いなのではないか。
だから、忌むべき「鬼」ですら、祀っている。
宗教がどの程度、人の心に根付いているのか、それを他人に強要することが、自己満足であり、欺瞞なのだと思う。
人が悪事を行うわけを、キリスト教では悪魔の所為にする。だから心の中を清めるのに、神を信仰する。
そのこと自体は否定しないが、やはり、根元は人間性の、心のあり様なのだと、改めて感じた。

SUTTY