劇場公開日 2017年1月21日

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「傑作です」沈黙 サイレンス 白波さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0傑作です

2017年3月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

幸せ

それは予想を超えたものすごい作品でした。
時代の逆を進むような堂々の160分、私が観に行けた頃は既に1日1回のみ上映になっていたので、時間を作るのがとても難しかったです。
でも監督は自分の撮りたいようにするのが一番だと思っているので、こういった尺の長い作品はこだわりを感じて好きです。
そしてタイトルにあるように音楽がありません。
虫の声、風の音、潮の音で構成されているのですが、退屈どころか「だからこそ」胸に迫るものがありました。
OPからそれらの演出が効いていて、スタッフロールまでそれで締める。実に素晴らしかったです。
スコセッシなので遠慮のない演出で、弾圧している様は観ていて苦しさを感じるほど。
また当時の考察をきちんとしているのでしょう、日本人が観ていても違和感を感じずにスッと入ってきました。
またキャストも気になる人が多く「スコセッシの作品に塚本晋也が出演している」ってだけで、観ないという選択はありませんでした。
その塚本晋也演ずるモキチが真っ直ぐで素晴らしい。特に聖歌を歌っているシーンはかなり胸にくるものがあり、作品の中で一番印象に残りました。
そしてイッセー尾形の怪演。この作品を支配するかのような、ものすごい芝居を観せてくれます。

物語は基本ひたすらに重いのですが、それでいてどんどん引き込まれていくんです。
そして話が進むにつれ深く深く潜って行き、宗教そのものを超え、命の根元に迫るような内容でした。
スコセッシはこういった「誰かの生涯」を描くのが本当上手いですね。
70を過ぎても未だ衰えぬ素晴らしい作品、まさに傑作です。

白波