劇場公開日 2017年8月26日

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「この映画、大筋で支持します。」関ヶ原 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0この映画、大筋で支持します。

2017年9月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

なるほど、新解釈とするにはあまりにも疑問点が多々ある。女忍者の仕事っぷり、弩や朝鮮式大砲などの武器、左近の最後、金吾の本音、、、。それに、抜け落ちすぎている戦前戦中のエピソード。だから評価が低いのだな。
しかし。そもそも2時間のなかに「関ケ原」を描こうとするのだから無理があるのは当然なのだ。要は司馬遼太郎の原作のどこを拾ってつなげ、クライマックスの合戦に持ち込むか、だ。
まあその点でも余計な描写はあったけども。特に女忍者は否定的なご意見が多いのだろう。いたところで男だ。お伽の相手もする男のはず。
だけど個人的には、そんな犬(忍者)にさえも筋を通す三成を描いたおかげで彼の堅物すぎる正義が際立ったと思う。
乱暴な言い方だが、最後に関ケ原にいたるまでの三成と家康の将棋のような政治的駆け引きを知らない人は、この映画を観る前に予習しとかなくちゃダメだと思う。じゃないと話に乗り遅れるばかりだ。猛スピードで走りゆく、たった2時間しかない映画に描かれない部分は、各自の知識で脳内補完するしかないのだから。

配役の妙には恐れ入った。
監督の表現したいキャラクターを、各役者が見事に体現している。左近を筆頭に、刑部しかり、清正しかり、正則しかり、ねねしかり、維新入道しかし。方言を用いるため、ややセリフを聞き取れない部分はあるものの、その分ありあまる個性と緊張感が伝わってきた。
なにより役所演じる家康の、抜群の家康らしさといったら、憎らしすぎて嬉しくなった。そのひねくれ具合が、アンチ家康の歪んだ心理ならではなんだが。

これまで幾度も映画やドラマで取り上げられてきた「関ケ原」。この解釈は大いに評価されるべきと思うがどうか。
ただできれば最後に、干柿を断って「燕雀いずくんぞ~」のエピは入れて欲しかった。じゃないと、三成が戦場から逃げた理由が伝わらないよ。

栗太郎