劇場公開日 2019年4月26日

  • 予告編を見る

「老年」アベンジャーズ エンドゲーム 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0老年

2020年12月14日
PCから投稿

サノスはほんとにわるいやつだったのだろうか。
この映画を見てから、しばしば、それを考える。

おどろくほど、このもんだいが考えられている様子を感じないんだが、日本はやがて65歳以上が三人に一人になる。その先も、どんどん増えていく。
それが減るってことは、ない。
生まれずに、死なないんだから。

ばかっぽいロジックなんだが、理屈や数値を知らなくても、生まれなくて、死なない国ならば、どうなりますか──を考えれば、なんとなくつかめる、かと思う。

いずれ日本は死に絶えるのだが、対策しているようすが感じられない。
もっとも、じぶんは政治を知らないので、そんなことをいえる資格はないが、ときどき、漠然と、だいじょうぶなんだろうか、とおもう。

こじんてきに、最良とおもえる対策は、非倫理で実現不可能なものだが、もういなくなっていいという人に、いなくなれる権利を与えること──である。

いなくなる、とは、死ぬの言い換えに過ぎないんだが、死と言ってしまえば、人命が尊いものだという、無敵の与太話をひきつれてくる──わけである。

ことさらドライなことを言っているわけではない。
人命は尊い、ことは知っている。それを否定する理由も、ペシミズムもない。
ただ、当人が、もういいなら、いいんじゃなかろうか。
当人が、もうじゅうぶん生きたんで、おいとましたい──ならば、させてくれても、いいんじゃなかろうか。

わたしも65くらいで、いなくなっていいと思っている。

ならじぶんでやりゃいい、と思うかもしれないが、自殺というのは、合法的にいなくなることとぜんぜん違う。生き残ったひとに、迷惑をかけることになる、いっしゅの犯罪だと思う。
そんなことをすりゃ、亡骸をしょりするひとがいるだろうし、遺品を引き取らなきゃならんし、密葬をしなきゃならんし、家族たちは身内に自殺者がいるひとになるし、庶民生活レベルで考えてみたとき、どんだけ迷惑か、想像もできないほどのことだ。

だが、いなくなっていいひとに対して、なんらかの形で、その権利と方法が与えられれば、その志願者はこの国にはおおぜいいるにちがいない。

60歳未満はダメとか、60歳以上でもかんぜんに健常ならばダメとか、そういったいろいろと条件をもうけて、つくればいいと思う。

個人的には、本気で、姥捨山しか、高齢化社会がすくわれる道は、ないと思っている。
だが、とうぜん無理だろう。

そう考えたとき、サノスは賢者である。
そもそも、かれは、ゆびをぱっちんしたあと、辺境で自給自足の隠遁生活をおくっている──のである。

つまり、権力や富や欲のために石をもとめたわけじゃなく、あちこちの星で、生命が増え、資源が枯渇している問題を解決するために、6個あつめて、ぱちんとやって、人口の半分を灰にしたのだ。いなくなった人々は痛みさえ感じなかった。

厖大な犠牲をはらって、それをやり遂げ、じぶんは孤独な余生をおくっている──わけである。

これを「慈悲」といわずして、なんと呼ぶのだろう?

この慈悲深い、救世の革命にたいして、アベンジャーズたちは、わざわざ時間をさかのぼって、サノスをたおし、半減した人口を生き返らせてしまう──という愚行をしてくれる、わけである。

だいたいにおいて、クリント(ホークアイ)が悪を成敗しにやってきた日本で戦っているのは還暦の真田広之である。この老人だらけ国をどうしようっていうんだろうか。なんて。

コメントする
津次郎