劇場公開日 2017年4月7日

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「子役のサルーが魅力たっぷり!」LION ライオン 25年目のただいま うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0子役のサルーが魅力たっぷり!

2021年4月30日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

まず言いたいのは、この手の映画につきものの「感動の再会」に伴う涙。確かに泣けます。そこは外してない。でも、そこに至るまでの抑えておくべき事象をていねいにつぶしておかないと、必ずしも感動には至らないということです。

そういう意味では、この映画は期待に応えているし、その一点に絞って見せればよかったと思います。あまりにも、余計なものを描き過ぎた。もっとはっきり言ってしまえば、大人になった後の、サルーの日常を描く必要性を、まったく感じないということ。只々、映画が長くなるだけで、恋人との逢瀬など、バッサリ切ってよかったと思います。

デブ・パテルの、雰囲気たっぷりの主人公ぶり。彼は、今まで演じてきた中で、もっとも素の自分に近い役なのではないかなと思いました。良かったのは、水面から顔を出す登場シーンのみで、そこからはどんどん期待値が下がっていきました。ニコール・キッドマンも、初めて実年齢に近い、若づくりの必要のないというか、首元のたるみなんかを容赦なく映し出されていて、それなりの覚悟をもって挑んだ役だと思います。

でも、何といっても、子役のサルーの素晴らしい演技。彼に尽きます。ほとんどセリフのないフィジカルな演技で、観客の目をスクリーンにくぎ付けにしてしまう魅力にあふれているのです。彼が出会う、数々の大人たち。それを自分の本能だけで選別していく洞察力だったり、小さな体に満ち溢れているエネルギーたっぷりの動きだったり、蝶の大群に魅了されている幼い好奇心だったり、説明のいらない奇跡的な美しいシーンが、網羅されています。それだけでも見る価値ありだと思います。個人的には、小さいのに、走るフォームがとても完成されていることに感心しました。大人用の自転車を持ち上げるシーンも、どうやら自力でやっているようです。なので、彼は子供ながらに、完成された骨格の持ち主のようです。

それもあって、成長した姿のデブ・パテルが、集落でも頭一つ抜けた背の高い大人に成長したのは、ちょっと不自然な印象を受けました。いくら栄養状態がいい環境で育てられたとはいえ、もって生まれた体格はそんなに簡単に覆らないでしょう。ストーリー的にも、「親子」という説得力が、画面を通じて生まれていませんでした。

総合的に見て、いい部分と、そうでない部分の落差の激しい、、非常に残念な作品でした。

2018.5.30

うそつきカモメ