劇場公開日 2016年8月27日

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「過剰な期待は禁物」ティエリー・トグルドーの憂鬱 SHさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0過剰な期待は禁物

2016年9月7日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

難しい

知的

普通とは言い難いけれども、この世の中に確実に存在するであろう憂いを、ひとりのフランス人が代弁しているといった印象の映画。
敢えて不自然なカメラ目線で出来事が捉えられ、それが非常に効果的であり、リアリティーをもってこちら側に迫ってくる。
普段、自分たちがやり過ごしている憂い、抱えている憂い、耐えられなくなっている憂い等々、すべてをトグルドー目線で見せてくれている。
淡々と嫌な事柄が並べられ、劇的なことが起こらないまま終わる。そのことを頭に入れて観賞しないと、過剰な期待をする恐れがあるかもしれない。自分もその一人であり、ああこれで終わるのね…といった思い。
内容は優れているんでしょう、たぶん。いかにもフランス映画(?)といった感じで、憂鬱という感情を描き出すための構築が重厚です。しかも政治問題みたいなものも絡ませて、非常に知的であり、哲学者が題材として取り上げるにふさわしい映画(だと勝手に思いました)。
結末の捉え方も人それぞれに委ねられているし、一生懸命思考しながら映画を見る人にとっては、たまらない作品(なのだろうか…)。
観賞中、後方からバリバリ菓子を食う喧しい音が聞こえてきたが、そういったものとは相容れない作品。ものを食いながら映画を見たいという人は、決して見ないでください。

SH