劇場公開日 2020年9月18日

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「手触りのある映画。雑誌をめくってるような感覚も。」ジャズ喫茶ベイシー Swiftyの譚詩(Ballad) トマソンさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0手触りのある映画。雑誌をめくってるような感覚も。

2020年9月20日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

1970年創業のベイシー。60年代生まれの私にとっては近くて遠い年月を愛おしむことも目的の一つと思い鑑賞した。近くて遠いのは、50年前のことだからもちろん十分遠いのだけど、同じ時代を生きていたと言っても幼少期だった私には遠い世界だ。その頃、近所にいた東北出身の大学生のお兄さんはフォーク歌手「本田路津子」に心酔していたなあ。この映画は期待通り、「レコードを演奏する」という菅原氏とその周辺のプロ中のプロの貴重な証言のみならず、60−70年代の時代・社会背景、そして便利さ一辺倒のデジタル化に上書きされゆく今日のアナログ人たる哀愁が存分に描かれていた。登場人物が愛おしく感じるのは、彼らが年をとってしまったことに対してとても自覚的で、怒るでもなし、威張るでもなし、自然体なことだ。失礼を承知で言えば、とてもかわいいおじさまたち!心の交流という意味では最早、生きてるか死んでるかすら構わぬ、超越した互いの貴重な記憶の断片を咀嚼し続けている様子なのである。
ちなみにこの日からアップリンクは全席販売となり、会場は満席。その9割は高齢者男性だった。中には早稲田のハイソサエティのOBも混じっていたのだろうか。

トマソン