劇場公開日 2018年4月20日

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「スピルバーグの懺悔」レディ・プレイヤー1 かなり悪いオヤジさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0スピルバーグの懺悔

2020年5月6日
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仮面ライダー1号・2号を見て育ったようなものの自分は、この映画に登場するキャラが大好きなオタクの方たちよりも一回り上の世代。ガンダムだの、赤い彗星シャーだのと皆さんが夢中になっていた頃は、すでにアダルト路線へとシフト?していた自分でも、思わず「おじさんも混ぜてよ」とお願いしたくなるようなめくるめくVRワールド。この映画で描かれる“オアシス”は、そんなオタクキャラを型どったアバターが百花繚乱する日米オタクにとっての桃源郷だ。

たとえガンダムvsメカゴジラのハイライトシーンに萌えることができなくとも、マリオカートを思わせるヴァーチャル・カーレースで、主人公パーシヴァルが乗ったデロリアンがコインをチャリンチャリンGETするシーンでは身を乗りだし、(まさかここでの)シャイニングへのオマージュシーンではポテチをほお張る手がフリーズ、アイアン・ジャイアントが熔岩の中でサムアップする場面では涙が頬を伝い、Zのはなつ“HADOKEN”で昇天?してしまったのである。

おそらく登場するキャラの年代を調べてみるとかなりの広範囲に渡っているのではないか。版権の都合で実現不可能とさえ言われた同名タイトルの原作に登場するキャラクターたちを一見無作為に選んだとも思えるキャスティングだが、スピルバーグ率いるドリームワークスの綿密なマーケットリサーチのたまものだろう。夢のオアシスを横取りしようと画策するiOi社は、オアシスでゲームプレイするためのアイテム課金を引き受けるファクタリング・カンパニー。プレハブ小屋の集合住宅=スタッグ住民のほとんどがその借金にまみれ、人生あきらめモードという設定も実に“リアル”なのだ。

そんなiOi社と借金まみれのガンターたちのオアシスをめぐる争奪戦は、VRとリアルをうまくシンクロさせたスピルバーグならではの演出が光っている。その創始者ハリデーの生前の姿がスピルバーグに生き写しとの指摘があるようだが、まさにほんそれ。オアシス経営権譲渡のための契約を結ぶ場面でパーシヴァルがハリデーのアバターにこう尋ねるのだ。
「あなたはアバターなのか?」
「ノー」
今まで散々バーチャルワールドへ若者を誘うような映画ばかりを作ってきたスピルバーグ。その懺悔ともとれるメッセージが印象的だ。
「現実こそが現実的だ」

戦後アメリカの庇護の元に経済成長してきた日本で育成されたオタクカルチャーが逆輸入される形でこうして日の目を見ることができたのも、残酷なほどの実利性を求めながらどこかファンタジーランドを夢見るアメリカ人の幼稚性をして日本にそうさせたのではないか。言い換えるならば日本という国そのものがアメリカ人の“オアシス”ではなかったのだろうか、とこの映画を見てつくづく考えさせられたのである。スピルバーグの言うとおり日本人が“現実に帰る”のには、まだまだ時間がかかりそうな気がするのだがどうだろう。

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かなり悪いオヤジ