劇場公開日 2016年6月11日

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「葛藤して知った家族の愛。心温まるひと夏の成長物語。」夏美のホタル 映画コーディネーター・門倉カドさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0葛藤して知った家族の愛。心温まるひと夏の成長物語。

2016年6月21日
PCから投稿

悲しい

幸せ

寝られる

【賛否両論チェック】
賛:それぞれが事情を抱えながらも、家族を想って生きている姿が胸を打つ。そんな人々の生き様に触れ、自分の亡き父の本当の愛情を知って、成長していく主人公の姿も印象に残る。遠くから主人公達を見守るような視点が多いのも、特徴的でありステキ。
否:展開はかなり淡々としていて、無音で長いシーンも多いので、興味を惹かれないと眠くなること必至。

 夢に疲れ、岐路に立たされた主人公が、ふと訪れた父との思い出の地で、思いがけず父の本当の愛情を知り、一回りも二回りも成長していく姿が、静かで穏やかに、それでいてしっかりと描かれていくのが印象に残ります。夏美が出逢う恵三や雲月、そしてヤスエと、それぞれが皆自分の家族への複雑な事情を抱えながら、それでもなお家族の幸せを想って生きている姿に、改めて〝親の愛”の強さを感じさせられるようです。「3つの恵み」の話なんかは、思わずグッときます。
 それに加えて、職人気質の雲月の叱咤激励や、夏美のために夢を諦めようとしている慎吾と、自身の夢に悩む夏美との関わり合いを通して、「夢を叶えるまで持ち続けることの難しさ」や、「大切な人を守るために何かを犠牲にすることの厳しさ」といったものも、観ている者の胸に問いかけてきます。そんな中でも、恵三が語る
「幸せじゃないか。家族のために働けるなんて。」
という言葉に、全てが集約されているような気がします。
 そしてこの作品では、主人公達の間で紡がれる人間模様を、わざと遠くから長尺で観るような視点が、随所に見られます。それはさながら、まるでホタルが飛び交う様子を、静かに遠くから見守っているような感覚を与えてくれます。
 展開はかなり静かで淡々としているので、人によっては眠くなるかも知れませんが(笑)、大自然の中での心温まる人間ドラマを、是非ご覧になってみて下さい。

映画コーディネーター・門倉カド