劇場公開日 2016年8月20日

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「彼女のエールじゃ『キセキ』は起こらない」青空エール ao-kさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0彼女のエールじゃ『キセキ』は起こらない

2016年9月12日
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鑑賞方法:映画館

単純

吹奏楽部側、つまりはアルプススタンド側からは高校球児はどんな風に見えるのだろう?そんな期待から本作を鑑賞したが、彼女のエールは僕の心に全く響かなかった。

野球部の応援がしたい…、その思いから吹奏楽部に入部するヒロインの動機はユニークであるが、吹奏楽部が野球部の応援をする場面はそれほど多くない。最も吹奏楽部は野球部のために活動している訳ではないので、彼女の動機は不純と言われても仕方がない。では、自分の理想とは別に、吹奏楽の魅力にハマっていくのかといえば、やっぱり野球の応援がしたいという気持ちが強い。

ロミオとジュリエットではないにせよ、吹奏楽部員と野球部員との部活違いの恋を描くのであれば、双方の部を結びつける音楽の重要性を描くこと必要だったはずなのだが、このカップルは無駄にイチャつくだけで、音楽の話題は皆無。せめて、彼の好きな曲を予め聞き出しておいて、最後の打席でそれを演奏する、果てはその曲で吹奏楽部がコンクールに挑むなどの演出があれば、まだ納得もできるのだが…。(エンディングで『キセキ』を流すのに、応援で使わないことが全く理解できない)

結局、応援にも音楽のどちらにも舵を切らないストーリーからはアルプススタンドの熱気も、吹奏楽部の努力も、高校球児の熱意も伝わってこない。そもそも、時には目を(時には耳を)疑うヒロインの行動に苛立ちさえ感じてしまったほどだ。

高校野球は球児たちの闘いの場であるが、アルプススタンドでは吹奏楽部も暑さに負けずに一生懸命エールを送っている姿がある。製作陣には是非とも、夏の甲子園に足を運んでもらいたい。本物の青空エールはこんなに軽いものじゃない。

Ao-aO