劇場公開日 2016年8月11日

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「神様はひとりぼっち」X-MEN:アポカリプス 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0神様はひとりぼっち

2016年9月4日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

興奮

『X-MEN』最新作は、4作目『~ファースト・
ジェネレーション』から続いた新三部作の完結編。
監督はシリーズ1,2,5作目を手掛けたブライアン・シンガー。

『~ファースト・ジェネレーション』は面白かったのだが、
再びシンガーが監督に返り咲いた『~フューチャー
&パスト』は風呂敷がデカ過ぎて混乱した出来に
感じたので、今回もちょっと心配していた自分。
だが今回は前作に比べると非常にシンプルで見易く、
シリーズ最大級のド派手な見せ場もたっぷり。
サスペンス映画を得意とするシンガー監督だが、
今回はストレートにエンタメに徹した作り。
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今回の敵は、紀元前からの眠りから目覚めた
世界最古のミュータント、エン・サバ・ヌール。
彼は他人の肉体に自分の魂を移して乗っ取れる上、
乗っ取った人間の能力も使えるようになるという男。
そうして何千年も生き続けながら能力を蓄積してきた彼は、
継ぎ足し続けて熟成された老舗うなぎ料理屋の
タレの如き恐るべき敵である(恐ろしさ台無し)。

神のように崇められていただけあり、その能力はほぼ万能。
クライマックスでは主要メンバーのあらゆる攻撃を
抑え込む、やってられないレベルの最強ぶりを見せる。
おまけにマグニートーとストームを含む強力なミュータント
4人を懐柔した上、その力を最大限に高める能力まで
持っているのだから益々やってられない。てられな。
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最終作というだけあり、過去シリーズとのリンクも豊富。
特に1,2作目とパラレル的に繋がる展開の数々にワクワク。
『X-MEN2』がお気に入りの自分は、中盤の“あの場所”と
毎度クズ野郎なアイツの登場に思わずニンマリした。
長い爪の彼も短い出番ながら大暴れだし、チャールズの
頭がアポカリプス・ナウになってしまった経緯も遂に判明。

新三部作としては初登場となるサイクロプス、ジーン、
ナイトクロウラー、そしてマグニートーと関わりのある
クイックシルバーら新規メンバーもきっちり活躍。
特にクイックシルバーは登場するやあの大大大活躍(笑)。
サイクロプス、君もやっと活躍してくれたね……(←コラ)。
ラストの大団円までキャラも見せ場も満載で、
シリーズのラストを締め括るに相応しい出来だ。
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不満点。

登場人物も語るべき背景も多いので難しいとは思うが、
前半の展開はかなりぎこちない印象。各人物の背景を
ぶつ切りで紹介していく感じを受けてしまって残念。

そしてエン・サバ・ヌール。
能力的には最強だが、人間的な器はあまり……。
どれだけ強大な力を持っても結局独りだった彼。
最初に彼が何千年も眠る羽目になった経緯と、
最後に彼が迎える結末とがうまくリンクすれば、
彼から受ける印象ももう少し良かったんだろうけど、
この物語ではその哀しさより卑小さばかりが目立ち、
割とステレオタイプな悪党にしか見えなかったかな。

マグニートーも惜しい。
彼が再び悪に堕ちる動機は涙無しでは見られない
のだけれど(監督自身がユダヤ人だからなのか、
マグニートーの過去を描くシーンは毎回
短いながらも力が入っているように感じる)、
それ故に最後の行動を取らせた動機が弱いと感じる。
あそこであの人が告白してればまだ説得力があった
と思うんだけどねえ。なんでやめちゃったのかねえ。
あ、けどあの『X』にはちょっと燃えた。

世界中の○○を○○するという衝撃展開もその後の
展開やテーマにイマイチ繋がらなかったり、
“英雄”ミスティークの葛藤が伝わりづらかったり、
詰め込み過ぎて薄味になったと思われる要素が
散見されるのも惜しい点。
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そういった「惜しい!」と思える点は多いものの、
『X-MEN』シリーズの締め括りとして最強の敵、
最大のスケール、最大のアクションをきっちり
実現してくれた上、過去シリーズとのリンクも
ちゃんと示してくれたということで満足度は高し。
エンタメ映画というくくりで言えば、ブライアン・
シンガー監督作品で一番と言って良い出来なのでは。
大満足の4.0判定で。

<2016.08.19鑑賞>
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余談1:
最終作のはずだけどエンドロール後に映像あり。
『ウルヴァリン3』に繋がるのか、はたまたーー
続けようと思えばまだ続けられる終わり方だしねえ。
どっちにせよ楽しみです。

余談2:
「シリーズものは3作目が最悪よ」
やめてぇ。もうやめたげてぇ。異論は無いけど。

浮遊きびなご