劇場公開日 2016年7月1日

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「彼の空、彼女の光」ブルックリン cmaさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5彼の空、彼女の光

2016年8月18日
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鑑賞方法:映画館

「BOY A」は、私にとって特別な映画だ。忘れ難い、希望と絶望。あの映画を作ったジョン・クローリー監督の新作と知り、これは観逃せないと思った。そして、脚本は、イギリス映画秀作には必ず顔を出す、脚本のニック・ホーンビィ。これはもう…!と、いそいそ劇場へ。
ヒロインが渡米する船のデッキ越しに広がる一面の海と空、恋人とデートする海辺の遊園地、故郷の浜辺…。中でも遊園地は、パステルカラーと楽しげなざわめきに彩られている。希望と幸せに溢れているはずなのに…空が重たい。雲ひとつないものの、どこかくすんで寂しげだ。
新たな世界に飛び込み、人と繋がり距離を縮めることの喜びと恐れ。そして、他者と近づくほどに、埋められらないと痛感させられる孤独感。「BOY A」と共通するものを感じ、すっと引き込まれた。
本作のヒロインは、帰郷により新たな世界から一旦離れ、飛び出したかつての居場所を新たに見つめる機会を持つ。揺れる彼女の選択は…。もどかしくも踏み出せなくなる彼女を後押しするのが、何とあの人物!…という点が、とても効いている。この意外性が、本作の魅力をぐっと押し上げていると感じた。
出逢いとは、つくづく妙なもの。親切で心優しい人以上に、思い出すだけで身の毛がよだつ、忘れられない嫌な出逢いもある。忌み嫌いたいものへの全面対決が、あらたな道への突破口となるのかもしれない。その時は不幸と思えた出来事が、後から思えば、何にも代え難い体験とるのかも…。そんな様々な過去の情景が、とりとめなく頭を駆け巡った。
人生は、不思議に満ちている。ヒロインを包み込む、ラストのあたたかくも力強い光が印象的だ。そういえば、船からの海と空、入国審査所の扉からも、光が差し込んでいた…! 闇あっての光。そんなことも感じた。

cma