劇場公開日 2016年7月1日

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「純文学を読んだような鑑賞感」ブルックリン 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0純文学を読んだような鑑賞感

2016年8月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

まだインターネットも携帯電話もない時代に、アイルランドの田舎町で鬱屈した生活を送る推定18歳くらいの女の子がニューヨークに行って暮らす話だ。
大都会に戸惑いつつ、ホームシックと闘いながら徐々に慣れていく。そして物語が少しずつ進むにつれて、主人公も少しずつ変化していく。それがこの映画の主眼で、主人公は大人しく従順だが必ずしも純粋無垢ではなく、隠しごともすれば恋の駆け引きもする。時には規則を破ることもある。
アイルランドとニューヨークを一往復半する間に、主人公は世の中のことを理解していき、自分の居場所を自分で築くようになり、主体性を確立していく。映画はいいことも悪いことも両方備えた等身大の少女の姿を偏りのない視点で正面から捉えている。その率直な表現は、純文学の作品の読後感に似ていて、とてもさわやかだ。非常に気持ちのいい映画である。

耶馬英彦