劇場公開日 2016年7月1日

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「美しく汚れなき物語」ブルックリン SHさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0美しく汚れなき物語

2016年7月22日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

笑える

知的

想像していたものとかなり違っていた印象。これほどまでに映像に魅せられるとは─。
ノスタルジックを漂わせつつ色彩豊かで煌びやか。単に郷愁というものの力に頼ることなく、しっかりと今と未来をつむぎ逢わせている確固とした映像に、終始感服の涙を催す。
構図、色彩、脚本とサウンド、あらゆる要素が見事に溶け合い、笑いと感動を誘い出す。
展開されてる話は、確かに汚れなき奇麗事で、現実世界を装ったファンタジーでしかない。それでも、これを単なるアメリカ賛美の映画と捨て去るにはあまりにももったいないくらいに、素晴らしい結晶がそこにある。美しいものをいつまでも眺めていたいという願望と等しく、この映画も繰り返し眺めていたいと思ってしまった。
ストーリーを追ってしまう映画というものは、とかく一度見てしまえばあとは見なくてもいいと思ってしまうものなのだが、映像と音がしっかりした映画であれば、ストーリー関係なく何度でも見たいと思うわけで、この映画においてもその範疇に入っている。
田舎者が都会で生き抜く話であり、男女の恋愛を描いたにすぎないわけで、星の数ほどに描かれてきた題材。しかも、結局は男を選んで他のものを捨てたというツッコミどころもある訳なのだが、それでもこの美しい映像は非常に心にしみこんでくる。
特に音楽がアイリッシュ的調子からいつの間にかアメリカ的に変わっているという演出と、対象と背景との色彩コントラストには恐れ入った。
シンプルにこんな映画をつくりあげてしまうアメリカというのは、恐ろしく、かなわないと思ってしまう。

SH