劇場公開日 2016年3月19日

「蔵花録」背徳の王宮 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5蔵花録

2021年9月4日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 冒頭から凄まじい勢いで民を殺しまくるシーン。完全にスプラッター映画かと見間違うほど血肉が飛び交っていた。暴君ぶりはこのあたりだけでも十分なのだが、中盤には芸妓たちの親を彼女たちに弓を引かせて処刑していく様子でげんなりしてしまうほどでした。

 そしてグロの次はエロ。全裸女性3人を妖しく密着させ、絵を描く王。1万人の美女を集める以前にも大奥みたいな存在があったことをうかがわせる。そして重臣イム・スンジェは彼女たちに芸と性技を教える役目も引き受けていた・・・姦臣と訳されているほど、王に媚びへつらい、巧みな話法で説得させるのだ。

 謀反も頻繁にあったようだし、死に怯える王を慰めようと朝鮮中から女性を集めるところもおぞましい。そんな中、スンジェの目に留まったのは、と畜業を営みながら剣舞を披露するダニ=チョ・ジョンファ。性教育を施すうちに、彼女が七林派の亡き首長キム・イルソンの娘とわかり、自分も母親を島流しの末に殺されてしまった過去を思い出し、やがて知らぬ内に恋慕感情を抱くように・・・

 暗いイメージたっぷりの中に、芸妓たちの艶やかな舞が美しくて魅入ってしまった。この原色を基調とした鮮やかさはチャン・イーモウの作品をも思い出してしまう。その表面の美しさだけではなく、裏ではセックステクニックまで教えるエロ度マックスのシーンもたっぷり。そこまで描いていいんですか?!ってくらい。

 結局は個人的な復讐心と民衆の蜂起。血には血を!王には豚を!といった徹底ぶりで、インパクト強すぎ。斬首シーンも驚いたし、美しいイム・ジヨンをここまでエロく描くのかという驚愕もあった。ただし、民衆側の心理描写がいまいちだったし、王の気の狂った部分は多いものの、結局は奸臣たちが作り上げた王だったという虚しさも残る。いつの時代も腐った政権は地獄を見なければならないなぁ・・・などと、あれこれ考えさせられた。『王の男』のエロティック版だと考えればわかりやすい。

kossy