ボーダーライン(2015)のレビュー・感想・評価
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その善悪にボーダーはありません
ヨハン・ヨハンソンの音楽とロジャー・ディーキンスの画で、始終緊張を強いられる。鼻の下の毛を抜きながらでないと観られない緊張感。
後半はベニシオ・デル・トロの独断場。
公開時のポスターに“その善悪に ボーダーはあるのか”と書かれているし、ニーチェの『善悪の彼岸』を観るような感じかと思っていたけれど、個人的には全くそうではなかった。
善と悪についてというより、原題のとおり、シカリオ(スペイン語で”暗殺者”)の話で、暴力は何も生まないという話だ。
善と悪の境界線について今さら問うのは古い。境界線はない。善と悪は、人間の中で、いつも対等で、いつでも交換可能な本性だと思うから。
あと「そうそう、ドゥニ・ヴィルヌーヴってSFの人になる前はこんな感じだったよね」と懐かしくなった。好きです。
悪が、肉体の表面を突き破る
自分の側が正義だと思っていた。しかし悪が、表面にある正義を突き破って、オモテに出る。気づいたらラスボスは自分自身(正確には自分の味方)だったー。
信じていた自分自身が、ラスボス。「自己」を疑問に持つ人物を作り上げる、ヴィルヌーヴ監督らしい作品。(『灼熱の魂』『ブレードランナー2049』など)
『メメント』をお手本とした、直近20年間の映画の語り口の一大テーマでもある。
自己探求+どんでん返し。自分を疑え。
アメリカ/メキシコを隔てる境界線。
そこでは同時に、正義/悪というコントラストが存在している。
車列は境界線を越える。と同時に、「正義」陣営の内に秘められた「悪」が首をもたげる。そして表面にある「正義」の皮を破って、露出する。「悪」の土地では、己が意思のままに銃撃殺人をおかしてもいい。正義の実現を目的とした、悪の実行。いいやそれは悪事ではない。単なる、目的達成のための手段。アメリカの国益。より大きな利益のために、小さな悪事を見逃す。(でも、ミクロな視野に立つ主人公に見えるのは、悪事だけ)
車列が正義→悪へと境界線をまたぐ
悪が、肉体の内部から外へと表皮を破ってあらわれる
ラスボスが、自分(達)の内側から現れる。
……「領域Aから領域Bに物体が移動するイメージ」で語りきった作品だと思います。おもしろい。
シカリオ
ボーダーラインってタイトルを付けた奴はこの映画との相性が悪かったんだろう。
緊張の糸が張りっぱなし、そして鑑賞する我々の後頭部をアレハンドロに見られているような、ジットリと嫌な汗が出てくる展開が続く。
いつ誰が死んでもおかしくない状況に放り込まれて、心臓がしんどかった。
答えは自分の中に
何気ない自然等の映像や音楽にやたら恐怖感を感じました。
音楽はわかるんですが、何気ない自然の風景にもそれを感じるというのは凄いです。
監督として独自の世界をはっきりと持っている、そのことが大事なことなんだということを教えてくれます。
復讐の為に新たに人が死んでいく。 なんか無限地獄みたいな…。
どこに希望を見いだしたらいいの?
そんな内容でした。
答えは自分の中に。
『トラフィック』にもデル・トロ出てたなあ
この邦題はよい邦題。国境麻薬戦争物だと『トラフィック』も面白かったが、これはより暗部に切り込んだ物に思えた。
こちらが麻痺してしまったのか、途中で何度か、「今彼女は何に対して怒っているのかな?」と思ってしまった。
と書いていたら続編が全米公開されヒット中とか。おおっ。
リアリティを追求するならば
淡々と進んでいくストーリー。
法律無視で無茶苦茶な警察やFBIだけど、それくらいしないと問題を解決できないという説明にも説得力がある。
そんな超法規的な作戦中、ありがちな正義感を振りかざす主人公が若干ウザい。
エンターテイメント的な映画ではないので、緊張感や恐怖感に如何にリアリティを持たせるかが重要で、そこが評価ポイント。
全体的には非常に良い!
だけど細部が甘い。
マネーロンダリングで札束を留めていたゴムと同じゴムを持っていたというだけで即攻撃してしまう主人公。
銃弾飛び交うトンネルでヘルメットを脱いでしまう主人公。
ラストシーンで銃口を無抵抗な人間に向けてしまう法律万歳なはずの主人公。
とにかく主人公が残念。
ヘルメットは無い方が絵的に良いからきっと制作側の都合なんだろうけど、あからさまなのは嫌だ。
つかめない麻薬社会の闇
・国防省の特別部隊の対メキシコ麻薬カルテル殲滅作戦に同行することになったFBI捜査官のケイト
・時々挿入されるメキシコ警官の日常シーン
・ラストに表示される原題は「シカリオ」暗殺者の意
・効果音が不穏な空気を増幅させる
・空撮や遠景ショットで物事の背景がわからなくなる様子が表れてる
・ベニチオデルトロが暗い過去を背負う寡黙な暗殺者役でベストアクト
こんな
世界が同じ地球上に有るなんて信じられないが、これも現実なんだと思うと本当に今の現実は実は脆い物なんだと実感した。
普通の神経では直ぐに持たなくなる世界に突然行くことになった主人公の心が崩壊しそうな感じが観ていて痛々しかった。
ゼロダークサーティより好き
この映画の好きなところ
・ありがちな主人公の成長物語ではない
・不穏な予感をさせる演出(音楽最高)
・ラストの主人公視点からの変換
・ジョシュブローリンの下衆感
・エミリーブラント
メキシコ麻薬カルテルものはハズレが少ない。トラフィックとならぶ傑作。
期待していたことと違う。
主人公が麻薬戦争の現状を知り、
ボロボロになって善悪の境界線の間で揺れる。
そんな映画だと思ってレンタルしました。
しかし違いました。主人公はずっと蚊帳の外で途中で選手交代させられストーリーが復讐劇にシフトしてしまうというものでした。
私が勝手に期待していたものと違ったのでそんなに好きになれませんでした。しかし、空気感とか緊張感がとても良く描けてました。
緊迫感
もちろん本物は見たことないけど、リアル感がハンパない。
特に国境での銃撃戦に至るくだりなんか、ひりつくような緊迫感。
全体をとおして無慈悲というか、
善と悪ってなんなんだ?という問いを力いっぱいぶつけられる。
画づくりも面白くて、キャストにも華がある。
それにしても、ベニチオ・デル・トロは陰のある男がハマり役。
謎の説得力というか、観てると本物のような気がしてくる不思議。
力無き正義と圧倒的な暴力 278-12
正義感あふれる主人公は己の正義を貫こうとするも、圧倒的な権力と己の無力さ故、想像を絶する現実に対し何もぇきない。どういう事なのか説明を求めて喚き散らすのみ。任務に連れてこられた理由も、彼女が必要だった訳ではない。
法規的な正しさだけで何とかできるほど甘い環境じゃなかったのだ。力なき正義は無意味なのだ。目的を達成するには彼のような、何を犠牲にしても、どんなことをしてでもやり遂げるという漆黒の意思が必要だったのだ。
善悪のボーダーラインとは目的、環境、個人の意思によって左右されるもので、己の正義を貫きたければ力をつけねばならない、そんな映画でした。
(映像3 脚本4 演出5 音楽3 配役5 )×4=80
流れは良いのですが
音楽と画面で緊張感を作るのがとっても上手いなと感じました。ただ、軸となる人物が複数人いる中でそれぞれの物語を描き切れてないんじゃないかとも思いました。良い意味で映画館で観たら楽しい作品だと思います。
麻薬カルテルの影響力が市民一人一人にまで浸透しているメキシコの闇と...
麻薬カルテルの影響力が市民一人一人にまで浸透しているメキシコの闇と、そこに潜入するアメリカ側の暗躍を、FBIの女性隊員の視点で丁寧に描いている。
惨殺死体が放置され、助けてくれるはずの警察までがカルテルの力で支配されている社会。日本人の感覚からするとその日常のあまりの地獄に愕然とする。
でも生まれた時から闇社会の暗黒に支配されていたなら、殺されないため、生きるために、カルテルに加担するしかない人生というものもあるのかもしれない。
子供とサッカーをすることだけが楽しみの父が、その一方で、薬物を運搬する警察官であり、毎日のようにおきている抗争のひとつであっけなく死んでしまう現実を考えるとき、問題解決の深刻さに気が遠くなる思いがした。
CIAとFBI
常識的に見れば無茶苦茶やってるCIAとその手先もFBIのお墨付きが必要だったとは(苦笑)。
白が無理なら無秩序なグレーより秩序ある黒のほうが扱いやすい。CIAが中南米で行ってきた基本原理なんだろう。相手が国家でも味方組織でも同じ。
ビルヌーブの緊張感のある落ち着いた画面が秀逸。突き放した感のある主人公の扱いもメッセージに通じるものがあった。
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