劇場公開日 2016年4月9日

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「ノンフィクションのような緊張感が持続する」ボーダーライン(2015) Cディレクターシネオの最新映画レビューさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5ノンフィクションのような緊張感が持続する

2016年5月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

興奮

知的

いや〜100本に一本出会うカンジの、

ヤバい作品です。

いつものように、

劇場予告編だけの情報だけど、

スルーしなくてよかったぁ!

素晴らしいのは、

この映画に段取りくささや、

ヒーローモノ的な甘さは無い。

それが全編にわたって、

とてつも無い緊張感を持続してるんだな。

米国の隣のメキシコで、

凶悪な麻薬カルテルと戦う捜査官のお話。

目を背けたくなる描写が、

終わらない麻薬抗争を浮き彫りにしていく。

しばしば主観的に描かれるカメラワークに、

いかにもその場に居合わせてるような臨場感。

監督の思惑にやられて、

劇場では固唾を飲んで見守るしかないよ。

とにかくリアルに振り切ってるのが、良かった。

まるでドキュメンタリーを観てる感覚になり、

終始フィクションなんだとリセットしました。

尺の都合、都合のいい部分もあるけど、

それ以上に演出が上手い。

実験的な構図や映像や音響も差し込んでくるけど、

決してテーマから逃げてない。

そしてカメラがいいなぁと思ってたら、

スカイフォールなどの名匠、

ロジャー・ディーキンスさんなんですな。

監督との次作、ブレードランナーも、

超楽しみです!

カルテルに家族を殺され、

正義なんかどーでもよい、

復習心に燃えた捜査官の演技は、

オスカー級だった。

あんな目で追いつめられたら、

死を覚悟するしかない。

もう心は生きてないからね。

彼がとったラストの行動は、身震いがした。

これこそリアル。

普通の映画なら、ぬるくなってるんだろうな。

ちなみに、実際家族を

麻薬シンジケートに殺された捜査官は、

結構いるみたいですね。

そんな現実も、恐ろしい。

演じたベニチオ・デル・トロさんは、

脇役で様々な作品で見たことがあるけど、

すごいキャリアの名優。

いい作品に出会えて良かったね!

その意気込みがジンジン伝わってくる。

ジョシュ・ブローリンも渋いね!

エミリー・ブラントも

プラダから実力派で頑張ってるけど、

このアクの強い二人とは、

勝負にならなかった。

けどね、

唯一この映画でぬるかったのが、邦題だよ〜(笑)

配給さんだめじゃん、

こんなテレビドラマみたいな安直なのつけちゃ!

キャッチコピーも「その善悪にボーダーはあるのか」って、

もうそんなナメた話じゃないでしょ。

「SICARIO シカリオ …とはスペイン語で」なんて、

ご丁寧に冒頭でタイトルの説明までしてくれてるのにさ。

きっと本国で監督はプンプンだよ。

こんなふうに作品のカタルシスが失われそうな場合は、

オリジナルタイトルでの公開を英断してほしい。

せめて、サブタイトルにするとか。

それが映画に対しての、

当たり前の敬意だと思うのですよ、うん。

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