劇場公開日 2016年1月16日

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「自分で割礼するシーンと、ペストの描写がやばい・・・」千年医師物語 ペルシアの彼方へ kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5自分で割礼するシーンと、ペストの描写がやばい・・・

2020年6月17日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 医学の歴史をじっくり描いた作品かと思っていたら、冒険スペクタクル満載のエンタメ作品だった。スカルスガルド演ずる“理髪師”は旅芸人風でもあるのですが、歯の治療や接骨医みたいな雰囲気で、土地によっては黒魔術師扱いもされている。ローマ帝国時代にある程度確立された医学も11世紀のイングランドでは廃れてしまったという解説とともに、実はイスラム世界では独自に発展を遂げていたという事実が興味深い。

 弟子入りしたロブ・コールは苦難の旅の末、イブン・シーナが教えているイスファハンの大学に到着。クリスチャンであったロブがユダヤ人に成りすまし、名をエッサイと変えて医学を学ぶが、母親の死因でもあった脇腹の病を治す手段を探し求める。また、恋心を抱いていたレベッカとも再会するものの、彼女は結婚してしまい・・・といったストーリー。

 イブン・シーナといえば、イスラム世界で医学の父とも呼ばれる世界史の中でも重要人物だったことを思い出す。哲学や天文学をも取り入れた神秘的な授業風景も印象的だったのですが、エッサイの探求心旺盛なところと、人の死を感じることができるところに親しみを抱き、王の謁見にも連れていき、信頼を獲得させるのだ。

 宗教の違いはあれど、寛容的なイスラム教だったイスファハン。外敵でもあるセジュール人との抗争など、見どころ満載に仕上がっているのです。また、内部にも原理主義的な過激派が台頭する様子、宗教的・政治的な面でも面白い内容。なんといってもイスファハンに黒死病パンデミックが起こるところがメインとも言えるのですが、毎日の死亡者数を書き込んでグラフにしたり、ロックダウンしたり、原因究明のため遺体のチェックや感染ルートを調べるところは、コロナのニュース漬けになっている今だと非常に理解しやすい。

 眼をそむけたくなるような解剖・手術シーンなどもありますが、痛い!と感じる場面が多すぎるかもしれません。発展させるべき医学・医学者を称えるようなストーリーではあるけど、かなりのめり込んで見てしまいました。

kossy