劇場公開日 2015年10月31日

「神ではなく希望の不在」裁かれるは善人のみ manamboさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0神ではなく希望の不在

2015年11月1日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

すっきりしない。この「ロシア映画らしいもの」の正体はなんだろう?陰鬱なストーリー、芸術的な映像?
腐敗した市長と司法に翻弄され崩壊する家庭と登場人物たちの不条理そのものの運命を描く。海岸に打ち捨てられた幾つもの漁船、浜辺に横たわる巨大なクジラの骸骨、ブルドーザーに叩き壊される主人公の家。ここで過去と未来を繋ぐのは、朽ちて腐ってゆく“モノ”でしかない。「あなたは神を信じる?」という台詞が繰り返されるけど、ここには神は赦す者としてしっかり存在している。むしろここに欠けているのは希望なのだ。もしや、ロシアでは映画が現状の悲惨さを嘆くことはできても、今とは違う未来への希望の姿を描くことが許されないのではないか?だとすれば、ロシア映画界は、ここに出てくる、政治権力と並走する教会と同じではないのか?赦すばかりじゃいかんと思うぜ。

manambo