劇場公開日 2016年3月19日

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「広瀬すずという女優」ちはやふる 上の句 オリオンさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0広瀬すずという女優

2016年4月3日
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鑑賞方法:映画館

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興奮

2部作の前編にあたる今作品。後編も気になりますが、単体としてもうまくまとまっていて良い作品でした。見てよかった。

高校生達のカルタにかける情熱、仲間との絆、好きな人への想いといった青春要素に、競技カルタの映像の迫力と、百人一首の色鮮やかな世界観が織り合わさって、爽やかかつ奥ゆかしい作品に仕上がっていました。
また、物語終盤、手に汗握るラストの展開で、太一が自分の過去の過ちと向き合い、必死に運命に立ち向かっていく描写は見事でした。

しかし、映画を通して強く印象に残ったのはやはり広瀬すずの存在感。
原作のイメージと合わない、あざとい、演技が単調、事務所のゴリ押し等々、ネットでは厳しい意見を多く見ましたが、私は全く気になりませんでした。むしろこの年齢で、ここまで演技ができて華のある女優がかつていただろうか。

カルタで上の句が読まれる直前、一瞬の早さを競う緊張感の中で、音が消え役者の顔がアップになるのですが、広瀬すずの真剣で鋭い眼差しには思わず引き込まれます。あの撮り方、あの緊張感の中で一層際立つ広瀬の存在感は見事です。
また広瀬演じるカルタ大好き少女千早は、演技っぽさがなくいかにも等身大の高校生といった感じで、純粋でひたむきな姿はつい応援したくなります。
また好みの問題かもしれませんが笑、広瀬すずは声で喜怒哀楽、感情を細かに表現できるなと感じます。量産型なんちゃって女優らと一線を画し、彼女を役者たらしめているのは声での演技力だと思います。坂道でおんぶされながら太一にカルタへの想いを語るシーンは特に印象に残りました。

作中では「太一から見た千早」という描写が多く、観客も太一からの目線で千早を見ることになります。つまり千早は憧れの対象として描かれるのですが、この構成に広瀬すずは見事にはまっています。自由奔放に動き回る広瀬すずは時にかわいらしく、時に凄みを見せ、魅力たっぷりです。
逆に言うと、広瀬すずがどう見えるかでこの作品の印象が決まります。

私はもう青春など語る年齢ではないですが笑、一生懸命カルタに取り組む千早達を見たら、仕事の疲れを忘れ、心が洗われるようでした。この作品で描かれる青春のきらめきには普遍性があります。幅広い年齢の方々に見てもらいたい作品です。

オリオン