劇場公開日 2015年10月31日

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「大コケにめげず、飛べ!ピーターパン」PAN ネバーランド、夢のはじまり 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5大コケにめげず、飛べ!ピーターパン

2015年10月29日
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鑑賞方法:試写会

楽しい

単純

幸せ

永遠の少年、ピーターパン。
彼はいかにしてネバーランドに来て、ピーターパンとなったのか、その誕生秘話。
結構楽しみにしていた本作。ところが全米では、ラジー賞有力候補とまで言われる酷評、興行的にも関係者なら背筋が凍るほどの大コケ。
でも、そこまで酷くはなかったぞ。

序盤は孤児院時代。
さながら「オリバー・ツイスト」。
おそらく本作オリジナルの設定だろうが、本当にピーターパンってこういう出生なんじゃないかと違和感ナシ。
児童文学、ファンタジーの鉄板。
良く言えば好奇心旺盛で自立心強く、悪く言えば手のかかるやんちゃ、辛い状況にもめげず、顔も知らぬ母との再会を夢見る。
ピーターパンである地盤は踏まえられている。
突如空飛ぶ海賊船が来襲、連れ去られるピーターや孤児たちと共に、見る側も不思議な世界へ…!

そこは、ネバーランド。
孤児たちも解放され、自由に。
…とはならず。
泣く子も黙る海賊の長、黒ひげが支配する世界。
子供たちは労働力に。
予言では、空飛ぶ少年が黒ひげを倒すという。
ひょんな事から、空に“浮かんで”みせたピーター。
彼が予言の少年なのか。
出生の秘密、この世界に居るとされる母、そして黒ひげを倒し自由と平和を手にする事が出来るか。
ピーターの勇気が試される…!

「プライドと偏見」「つぐない」「アンナ・カレーニナ」…文芸作品の名手、ジョー・ライト。
文芸作品とファンタジーは通じるものがある。豪華絢爛な美術、衣装、映像美…。
初のファンタジー&初の本格エンタメ作品でも凝った美しいビジュアル。
VFXをふんだんに駆使した、序盤の海賊船のロンドン上空飛行、クライマックスの空飛ぶ海賊船VS空飛ぶ海賊船は、これぞファンタジーの醍醐味!

敵はかつての友。
まだ両手がある若かりしあのキャラが、後の自身の手になるであろう鉤爪を研いだりして、思わずニヤリ。
これまた後に口癖となる“スミ~!”もちゃっかり登場。
まだチクタクチクタク鳴ってない天敵、マスコット的なあの妖精の姿も。
リンクネタも楽しい。

オーディションで選ばれたピーターパン役の少年は、特別可愛いという感じではなく、ちょっと魅力に乏しかったかな。
なので必然的に脇を固めた3人に目が行ってしまう。
ヒュー・ジャックマンが悪役黒ひげを楽しそうに演じ、さすが人気スター、ユニークな存在感を発揮する。
ギャレット・ヘドランドが既存の船長とは違うタフガイぶり。
ルーニー・マーラのタイガー・リリーは先住民というよりコスプレした女の子風。でも美人だし、勇敢だし、これはこれでいい。

ここからちょっと苦言。
ジョー・ライトの演出は娯楽に徹しているが、遊び過ぎてサービス精神過剰。
3Dを意識する余り、子供向けに感じるのは好き嫌い分かれる所。
エピソードは豊富でテンポ良く進むが、収束させようと急ぎ足に。
肝心のピーターが空飛ぶシーンは、少々吊られている感が…。

これらを差し引いても、冒険ファンタジーとして無難に楽しめる。
勇気。友情。愛。
そして自分を信じた時、きっと飛べる!

今回はピーターパンがピーターパンとなるまで。
あの妖精との出会い、あの船長との対立(まだ手も食われてないし)、あの子供たちの家にやって来るまで、どうせなら見てみたいが、大コケしたからさすがに無理か…。

それから、この作品に限った事じゃないが、日本版主題歌ってのは止めて欲しい…。

近大