劇場公開日 2015年4月25日

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「豪華な美術はぜひ大画面で鑑賞を。ブラナー監督の演出はいくつかの点で真新しいけど、基本的に堅実。」シンデレラ(2015) yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0豪華な美術はぜひ大画面で鑑賞を。ブラナー監督の演出はいくつかの点で真新しいけど、基本的に堅実。

2020年7月5日
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鑑賞方法:映画館

現代のシンデレラ劇としてケネス・ブレナー監督がどのように演出するか期待していたけど、予想外に王道の「シンデレラ」でした。幾つかの味付けはなされていたけど。衣裳やお城の舞踏会を俯瞰で捉えた映像など、美術的な見所が多くて、間違いなく機会があればぜひ劇場で観るべき作品です。

 本作は、ディズニーが『アナと雪の女王』で新たなヒロイン作品を提示した後の実写版作品という位置づけで、本作に続いて『アナと雪の女王2』、『ムーラン』とつながっていきます。そこで鑑賞前には、ディズニーが提示したヒロイン像を本作がどのように解釈し、拡張していくのか、という期待がありました。確かにブラナー監督はシンデレラを単に王子の登場を待つ無力で哀れな女性ではなく、自分の意志に基づいて行動するヒロインとして描いています。しかしその描写は『アナと雪の女王』ほど「攻めた」ものではなく、少なくとも表面的には抑制的で、結末までの流れはこれまでの王道的な物語とそう変わらないという印象を持ちました。やはりディズニーランドのシンボルともなっているシンデレラ像を、大胆に改変することは難しかったのでしょうか。

意外にも、継母と義姉達がシンデレラをいじめる過程は、実写で観るとこんなにきついのか、と思うほどに苛烈です。もちろん直接的な描写は控えめだけど、シンデレラが精神的に徐々に追い詰められていくさまは、画面を正視できない人もいるんじゃないかと思うほどでした。継母役のケイト・ブランシェットの時に芝居がかった振る舞いのおかげで、画面の緊張が少しほぐれたことが救いだけど、ここだけほとんどホラー。あ、あと従者達に化けた動物たちも。

なお、本作で女性抑圧の権化のような継母役を演じたブランシェットが、実は女性の地位向上のために積極的に行動していたり、かつてブラナー監督と交際していたヘレナ・ボナム=カーターが、ちょっとコミカルな魔女として出演してシンデレラを救ったりなど、画面外でもいろいろ人間関係の機微を感じさせてくれる作品でした。

yui