劇場公開日 2015年7月18日

「創作で国境(人と人の心)を越えて」HERO 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0創作で国境(人と人の心)を越えて

2020年1月30日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

楽しい

単純

興奮

木村拓哉主演の高視聴率TVドラマの劇場版第2弾。
2014年に放映されたTVドラマ第2期は実に13年ぶり! この劇場版も前作から8年ぶりとなる。

13年も経てば東京地検の面々もガラリと変わった。
小日向文世、八嶋智人、角野卓造、警備から事務官になった正名僕蔵、あるよ田中要次は続投だが、
久利生の新たな事務官に、北川景子。
その他の新メンバーに、杉本哲太、濱田岳、吉田羊、松重豊。
こちらもこちらで豪華。
変わらぬは、久利生だけ。キムタクはさすがに歳を取ったが…。

さてさて今回の話は…

都内で起きた交通事故死。調べ始める久利生たち。
その被害女性は大阪暴力団恐喝事件の証人でもあり、口封じの為に殺されたか…?
が、加害者のドライバーは突然飛び出して来た彼女を轢いてしまっただけと証言。
そんな時大阪地検からやって来たのは、久利生の以前の事務官で今は検事となった雨宮だった…!

松たか子もカムバック。
序盤はまるで同窓会気分。
和気あいあいではあるが、かつて色恋の関係もあった久利生と雨宮はギスギスした雰囲気。周りもそれを知ってて、気になりつつも気まずい…。
ファンにとってはこの二人の関係こそ一番気になるのだろうが、シリーズを見てない者にとっては、正直どーでもいい。
無論、こんなのが延々続きはしない。ちゃんと本題に入る。

雨宮も加わって、調査再開。
それにしても久利生、松たか子と北川景子の両手に花で、ありえねー!けど羨ましい限りだぜ…。
事故があった場所が問題。
そこは、(架空の国)ネウストリア大使館の裏であった…!

知っての通り大使館は、日本国内にあっても、日本の法律が通用しない“外国”。
絶対不可領域。もし立ち入ろうとすれば、国際問題にすら発展。
常識ではそうだ。
が、常識が通用しないのが、久利生という男。
門を叩いて話を聞こうとする。要は、あなたの家の裏で交通事故が起きて、それについて何か知りませんか、みたいなもの。
当然門前払い。門は堅く、国境の壁は厚い。
それを久利生が勝手に乗り越えちゃったもんだから、大問題に…。

大使館から大クレーム。
今、日本とネウストリアは貿易交渉でピリピリモード。
外務省欧州局長から目を付けられる。ゲスト出演に、佐藤浩市。

相変わらず捜査の為ならお構いナシの久利生。
しかし調査を続けていく内に、大使館内部の人間が事件に関わっている事が判明。
久利生は事件の真相追求の為、何とか“国境”を越えようと奔走するが…。

大使館に足を踏み入れた為に、命を狙われる久利生。
それでも久利生は諦めない。
人一人が死んだんだ。
相変わらず人一人の命を“たかが”と吐き捨てる巨大権力に、久利生の正義が爆発する。
普段はバラバラで個性的だが、真相追求の為には一致団結するチーム。
お天気アナやネウストリア料理店で出会った初老の男、そして国境を越えるものとして、食べ物やスポーツ…それなりに伏線も張っている。
今回も痛快な勧善懲悪ストーリー。もはや定番。

国境を越えるもの。
美味しそうなソーセージ(あの大きさで7本は食べられないけど…)や風変わりなスポーツもいいけど、ベタだけどやっぱりアレなんだよね。
人と人。
国境という隔たれた壁があり、法律も文化も価値観も道徳観も何もかも違う。
でも、面と向かい合えば。話し合えば。交流を持てば。
きっと分かる。
そこに国境など無い。

熱意と、人と人の心によって、遂に…。
確かに心には届くメッセージだ。
しかし今回も、理想的な善や正義だけを訴え、現実的な苦味の欠片も無く、やっぱりどうしても漫画的。
実話で大使館の門を開け、国境を越えた話があったらそれは素晴らしいが、だって結局はキムタクの創作TVドラマの劇場版なんだもん…。

劇場版2作を続けて見たが、
まあ、つまらない事はない。気楽にすんなり見れる。
が、全体的に軽く、例えメッセージは良くても、ズシンとまでは響かない。
また時折、本筋より脱線エピソードやキャラ立ちが目立つ。本作も然り。
それでもファンにとっては“HERO”なのだろうけど。

近大