劇場公開日 2015年12月5日

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「センポのビザ」杉原千畝 スギハラチウネ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0センポのビザ

2015年12月6日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

知的

第二次大戦時、ナチスドイツの迫害を受ける多くのユダヤ人を救った人物と言えば、スピルバーグ映画で知られるオスカー・シンドラーが有名だが、日本人にも居た。
かねてから杉原千畝の事は知っており、(短編ドキュメンタリーはあったものの)映画化すべきと思っていたので、この冬密かな待望作!
「めぐみ」「太陽」とは違い、ちゃんと日本映画として作られたのが嬉しい。

自分はいわゆる戦争を知らない世代。
だから、当時、どんなに日本が愚かだったか、ナチスの悪行やユダヤ人についても映画などで知り得た知識だけ。
何も知らない自分がとやかく語れる立場じゃないが、一個人として言える事は一つ。
人が人の命を救う行為は、昔だろうと今だろうと戦時中だろうと変わらず尊い。
例えそれが独断でルールに反していようとも、後世ではどう評価されているか。
6000人の命の子孫は今、4万人以上。
この数字が英断の全て。

外交官として諜報活動も行っていたという杉原千畝。
ちょっとお堅そうな題材に、スパイ映画のようなエンタメ性を加味している。
自分の目で見て収集・分析した世界情勢、日本の行く末。
祖国愛、数ヶ国に堪能など、知れば知るほどその人物像が面白い。

こういうストイックな役をやらせたらピカイチな唐沢寿明。
昨年の「イン・ザ・ヒーロー」の肉体改造は大変だったろうが、現地の俳優と半分以上の非日本語で堂々と渡り合う今作もキャリアにおいて特に記憶に残るもの。
2年連続の良作良役。
また、杉原千畝をサポートする現地の役者も好演。

史実に忠実にというよりかなり映画的に脚色、にも関わらず全体的には少々華に欠ける。
また、杉原千畝の妻役である以上居なくてはならないが、一人派手に着飾っている小雪だけ現実味ナシ。
…など難点も目立つが、終戦70年の意欲作。

杉原千畝の強い信念。
世界を変えたい。
たった一人が世界を変える事は出来ないが、たった一人が多くの命を救う事は出来る。
それこそが本当の世界を変える力。

昔、杉原千畝を初めて知った時、非常に感動した。
日本人としてだけじゃなく、一人の人間として。
若い人たちにこそ、こういう人物が居た事、そして尊い何をしたかを見て、知って貰いたい。

近大