劇場公開日 2015年8月8日

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「頼むから、蛇足はやめて、監督さん」この国の空 島田庵さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0頼むから、蛇足はやめて、監督さん

2015年9月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

高井有一さんの、谷崎潤一郎賞を受賞した同名小説(1983年)の映画化。

戦争映画は、人類の記憶として重要だとは思うけれど
自分的にはすでに一生分観た気がするので食傷気味。
でも予告編を見て二階堂ふみさんが出るのを知り、
ああそれなら観てみようか、と思った次第。

「ドクトル・ジバゴ」や「小さいお家」などと同様、
戦争は背景としては重要だが、
軸はあくまで人の――ここでは二階堂さん演ずる里子の――生き方にある。

そして、
茨木のり子さんの詩「私がいちばんきれいだったとき」が
見事に重なる。

少女から女になりつつあるとき、
戦争も末期で、東京はすでに大空襲に見舞われ、
若い成人男性はほとんど応召して周囲にいない、という状況で、
妻子が疎開中の隣家の38歳の男性に心を惹かれてゆく・・・

その情念が、丹念に描かれてゆく。

原節子さんもかくやという
二階堂さんの古風な演技が素晴らしい。

最後の最後(エンドロールの直前)、
痛恨の蛇足がなければ、満点だったのに。

頼むから、世の中の監督さんたち(あるいは製作の方々)、
原作にない余計な説明を付け足して
作品を台無しにするのは、やめてくれ。

島田庵