劇場公開日 2015年9月26日

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「少女が 大自然が 美しい ... そして 切ない」草原の実験 高橋典幸さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0少女が 大自然が 美しい ... そして 切ない

2015年10月16日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

幸せ

セリフ無しで描かれる少女の物語。観客の咳払いやため息、イスの座り直しの音さえも劇場内に響き渡ってしまうほどに、静かにゆったりと描かれます。少女を演じたエレーナ・アンさんをスクリーンで観たかっただけで観に行った作品ですので、大満足です。心しれた相手とは、言葉を交わさずとも、その佇まい、ふとしたしぐさや目や表情、行いだけで、口から出す言葉以上に多くを語りあえるということを、あえてのセリフ無しのシーンで描くことで魅せてくれたなあと感銘を受けました。登場する男性陣3人はシーンによって「アー!!」とか「ウッ!」とかの声は一部あるのですが、少女は最後まで一切声を発しません。少女はほんの数シーンの息の音のみです。ロシア映画ですがセリフが一切無いので字幕も無いため、スクリーンの映像と音に集中して見入ることができました。帰宅の道すがら劇場パンフレットを全部読んだのですが、劇中シーンの写真を見、また、あらためて、予告編映像を見て、ほほえましくほっこりしながらも、同時に切なくなります。人生ってこうなのかな。久しぶりに渋谷のシアター・イメージフォーラムに行きましたが、やはり、好きな映画館のひとつです。少女がその先にみたものーきっと美しいものに見えたんだろうなぁ…エンドロールが終わって劇場内が明るくなるまで私は立ち上がれませんでした。

高橋典幸