プリデスティネーションのレビュー・感想・評価
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これぞタイムパラドックス
爆弾魔の犯行を阻止するため過去に飛ぶ捜査官の話。
これはポスターから伺えるあらすじですが、
本作はこんな簡単な話じゃなく、
運命のいたずらをこれでもかと描いてます!!
最初はある男の人生の話から始まりなんだこりゃ?って感じ。
そこから怒涛の展開!
翻弄される主人公、無意識なのか意識的に過去と未来をつなげようとする主人公。
やはり運命は変えられないのね。
ラストの後はどうなってるか謎です、あれも輪廻なのかそれを断ち切ったのか。
分かる方は教えてください!!
素晴らしい
オーストラリア映画ということもあって低予算でうまくまとまった作品の印象。間違ってもハリウッドのアクション映画のような規模感は期待すべきでない。
加えてアクション映画のようなポスターだが、実際のところはストーリーの伏線回収と綺麗な映像や古き良き時代のアメリカの雰囲気が楽しめる映画であって、ドンパチを見るような映画ではないのは確か。
ストーリーの伏線回収は見事で、非常に鮮やかだったし、サラスヌークとイーサンホークの演技は本当に光っていた。ただ、このようなやや難解とも言えるストーリーは好き嫌いが分かれるはず。好きな人にはたまらない映画であることは間違いない。
一度最後まで見た後に、あの時のセリフはこれを暗示していたのか!と節々を思い出すことができるので、個人的には一度の鑑賞ではもったいないと思ったくらい。
具体的に例を出すと、顔を大やけどして治療を受けた後に「この顔じゃ俺の母親でさえ俺だとわからないだろうな、、、」と主人公が鏡を見てつぶやく場面は、後から考えればなるほどである。
もう一つ例を出すと、病院で自分の赤ちゃんを連れ出す直前、上司がタイムトラベルでやってきて、「緊急事態の時だけ今でもタイムトラベルをするんだ」と主人公に行っていた場面。これは恐らく主人公が自分の辛い人生を鑑みて任務に対して弱気になり、赤ちゃんを1945年に連れ戻さないという選択肢が生まれてしまう世界が存在すること、そして上司がその分岐を緊急事態と考えて食い止めようとしていることが示唆されている。
予算の少なさは画面から伝わってきてしまうが、脚本は非常によく練られていて、一見の価値があるのは間違いない。
それにしても人生の悲哀を感じさせてくれる映画だ。世の中そんなもんさ、と一言で片付けられるような、そんな楽な人生など存在しないということを、映画を通じて教えてくれる。
よかった
タイムマシンがかっこよくて、時空を跳ぶと体にダメージがあるところも感じがよかった。空間から突然人がいなくなるとその体積分気圧が変わるのか、突風が吹き荒れるような表現もよかった。タイムマシン開発の前後53年しか跳べないのもよかった。
主要な登場人物が、実質的に一人だったというのはあまりに閉じた話で、もうちょっと社会性と言うか社会との関わりも描いてほしかった。娘時代はまだいろいろあったけど、おじさん時代は管理の人としか深いかかわりがなかった。
面白かったし表現もしっかりしていたけど、どこが始まりなのか考えても答えが出ず、そうなると結局「だからなんだ?」と思う。なんでそんな話に熱心に付き合わなければならないのだ、勝手にやってろとも思う。
ただ、タイムトラベルはしてみたい。今タイムトラベルしたいと思っているのは岡田斗司夫さんであろう。トラブルの元凶を全て解消してうまいことやり直したいはずだ。
登場人物に魅力が感じられませんでした。
レビュー評価が高く楽しみにしていたのでずが…
前半の長すぎる基本ストーリー自体に魅力が感じられず。
核となるループを描きたいがために、人物の心理状況がおざなりでバランスが悪い。まず、自分が自分に恋をするって… 生理的にダメで感情移入出来ません。
そうなると結局グルグルしたいだけじゃん!て感じ以外なかった。
運命
Predestination とは、キリスト教でいう「予定説」(最後の審判で救済される人間ははじめから決まっている、という説)、もしくは運命、宿命の意味。
まさにこのテーマの映画で、予告の文章にあるようなかっちょいい爽快SFアクションとは全然違う、重く厭世観ただよう内容。
荒唐無稽な設定ながら、演技や映像が非常にリアリティがあって、ありえない話なのにありえるように見えて面白かった。
原因が結果に、結果が原因に、という逆転現象があちこちで起こってわけがわからない状態になっているが、結局主人公の運命は変わらない、変えられない、ということなのか。
この世界観において、歴史が変えられるのかどうか、というのは大きな謎だ。そもそも時空警察のようなものは、犯罪者によって変わってしまった歴史を修正するための組織のはずだし、作中にも歴史の分岐点を作ることは犯罪になるというセリフがある。
ということは歴史は変えられる、はずだが、なぜか主人公にまつわる歴史はまるではじめからその道筋が決まっていたと解釈しなければならないように思う。
少し深読みして解釈すれば、主人公のような歴史から切り離されたループ的自己完結的な存在そのものがありえないのだから、おそらく歴史が変わる前の本来の歴史がもともとは存在していたはずで、何度も複雑な歴史操作が繰り返された結果、ループ的因果関係がどこかの時点で発生し、そこから主人公の歴史変化が止まった(運命が設定された)ということなのかもしれない。
この映画は、運命についてなにか重要なことを示唆しているようにも思えるし、そうでないようにも思う。ただ、人の一生ということについて考えさせる。
親、子、憎む人、愛する人、上司、部下、みんな実は違う時間軸の自分だ、というのは、なぜか現実の人生にもあてはまるような気がする。
そして、時を経ると不可逆的に賢くなるわけでもない。未来の自分を否定することや、過去の自分を尊重することもまた大事なはずだ。
伏線は回収しきった気持ちのいい終わり方
貼っては回収、貼っては回収する面白い話でした。
最初のバーの話が冗長かなと感じたのですが、それを過ぎれば面白い。
中性的な若者の理由も納得しましたし、赤子の件もなるほどと思いました。
ラスト。結局殺した後にタイムトラベルしたらああなっちゃうのかなぁと思うと何とも言えませんが、伏線は回収しきったと感じたので、この流れになってしまうのは仕方ないんですね…。
孤独と怒りの到達点
今さら偉そうに言うほどのことでも無いが、
SF映画は単なるエンタメ以上のものになり得る。
その世界観を利用して、社会や人間の姿を浮き彫りにすることが出来る。
本作の場合は、タイムトラベルSFの体裁を借りて
ナルシシズム(自己愛)や性的マイノリティの孤独と怒り
を描いているのだろうと、僕は勝手に解釈している。
※ナルシストと言う言葉は自惚れ屋とかの意味で一般に使われるが、
ここで言うナルシシズムはもっとずっと切迫した意味合いだ。
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この物語の設定においては、時の“分流”を防ぐ為、
時空警察の人間は他人と必要以上に接触できない。
しかも主人公ジェーン/ジョンの場合は、
両親はおろか自分を理解し愛してくれる人もいない。
現代以上に性に対する理解が浅い時代なら尚更だ。
(実はタイムトラベラーという設定自体が時代に
受け入れられなかった存在のメタファーなのだろうか)
誰にも愛されない孤独な人生など生きてゆけないと絶望するなら、
あとは自分自身を愛するしか生きる方法はない。
後半のとんでもない展開も、勝手に奪われたかつての自分を
愛しいと思うが故と考えれば納得がいくし、
主人公自身が歴史に名を残す爆弾魔と化し、
己を殺しに来る己を待ち焦がれるというラストにも唸る。
優秀なエージェントだった彼があれほどの惨事を起こすに
至るまでが飛躍し過ぎて思えるのが不満点だが、
「お前が恋しい」と呟いたあのラストから何十年も歳を重ねる内、
理性に歯止めが利かなくなっていったのかもしれない。
どうして誰も自分の存在を受け入れてくれないのか?
どうして誰も自分を愛してくれないのか?
愛してくれるのが自分自身しかいないというなら、
自分を愛してくれないこんな世界なんぞ爆破してしまえ。
この映画にはそんな怒りが渦巻いている。
フィズル・ボマーという爆弾魔の通称を劇中の誰が付けたかは
忘れてしまったが、フィズル(失敗)の名を冠しているのは
主人公自身の「自分はいびつな存在だ」という自己嫌悪の表れなのだろうか。
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映像的な見どころも好み。
まずもって1980年代前後の時代の夜の雰囲気がシブいし、
スペースコープ社の70年代SFチックな雰囲気も良い。
物語のカギとなるタイムマシンも、いかにも近未来風の
ぴかぴかなマシンでは無く、バイオリンケース型。
全時代で通用しそうなトレンチコートにリボルバー拳銃、
1981年から±50年しか移動できないというビミョーな利便性や、
時空を移動した瞬間に空間が収縮/膨張するような演出も、
レトロSF感満載。シブいねえ、おたく、まったくシブいぜ。
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ただ、テーマもミステリとしてのスジも面白かったが、
『ブレードランナー』や『インセプション』級のスタイリッシュな
SFエンタメを期待していると、肩透かしを食らうのも確か。
『タイムコップ』みたいに主人公が華麗な回し蹴りを
喰らわすシーンも無いし。(←その路線は誰も期待してない)
この映画、アクションシーンはほぼ皆無で、
冒頭以外は回想シーンと会話シーンばかりなのである。
中盤までは物語に動きがない(ように見える)ので、
『この映画大丈夫?』と不安になったのも確かだ。
ネタバレ指定にはしたが、もしこれから観る人に紹介するなら
「アクションは無いからミステリ映画として楽しんで」と勧めるだろう。
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最後に、ここのところ作品選びがバツグンのイーサン・ホーク……
も良いけど、それを差し置いても主人公を演じたサラ・スヌークが素晴らしい!
特殊メイクの力もあるがまさか同一人物が演じているとは
途中まで信じられなかったし、そうでなくても相当にタフな役回り。
肉体的にも精神的にもチャレンジングな役に挑んだ彼女に拍手をあげたい。
<2015.02.28鑑賞>
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