シャトーブリアンからの手紙のレビュー・感想・評価
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うーん、
当時のつらい状況の映画だったけど、ストーリー性が乏しいというか、なにか信念を貫いての反乱とかもなく、ただ「終わり」に向かっての流れだけのようにも感じた。
実話に基づいたものだったろうけど、映画にするなら、見てる側に訴えかけるような、もうちょっと見応えもあった方がよかった。
でも、自分が処刑する側の、権限があるくらいの立場なら、実際はそのまま収容所に生かしておいて、「処刑したことにして」、処刑した報告をベルリンにしてたかも。
どーせドイツからはわざわざフランスまで確認には来ないだろうし。
でもそんなのん気なことも言ってられない時代の話で、まさしく「命令の奴隷になって」粛々と命令を遂行していく現地の軍人たち。
今も、東欧で起きているロシア軍の蛮行にも似た虐殺の「命令の奴隷たち」とも重なるとこがあった。
フォルカー・シュレンドルフ監督の遺言のような作品。
ブリキの太鼓のフォルカー・シュレンドルフ監督作品ですよ。
ブリキの太鼓でも、ナチスをグロテスクに諷刺していましたよね。そういうとこ、ドイツは凄いと思う。
本作は第二次世界大戦時のナチ占領下のフランスで、150人のフランス人が銃殺された史実を元にしています。
発端はナチの1人の将校が暗殺されたことなんですが、ヒットラーは17歳の少年を含む150人を殺せと命令します。
彼等が殺されるまでの4日の出来事を、17歳の少年目線で描いています。
フランスではこの他にも、「サラの鍵」に出てくるるヴェロドローム・ディヴェール大量検挙事件(1万3152人)などがありますが、あまり知られていないように思います。
シャトー・ブリアンというのは地名で、そこの収容所がありました。
17歳の少年が最後に家族に当てた手紙が、タイトルになっています。
淡々としてます。でも確かに迫ってくる死の恐怖を、背中に感じる。
まるで自分が死を待つような心境になって、震えました。
当時フランス政府は存続していましたが、ヒットラーが17歳の少年を殺すのさえ止められなかった。
シュレンドルフ監督は、17歳の少年に訪れる死を誤魔化しません。
無力とはこういうこと。静かに語りかけてきます。
ラスト。死に行く老人が砂に埋もれた自身の義足を脱ぎ捨てるところが、心の解放を自由を求めるメタファーのように思えました。
同時にドイツ兵達の葛藤も描かれています。命令に従うのか?良心に従うのか?
理不尽な銃殺に耐えられず嘔吐するドイツ兵(可愛い顔をしてたので調べたところ)は、後のノーベル賞作家ハインリヒ・ベルがモデルのようです。ヒットラー青年団に入るのを拒み、その後もずっと反体制を貫いた人です。
フォルカー・シュレンドルフ監督は現在76歳。
残りの人生を何に捧げようと思っているのか、よく分かる作品でした。
歴史の偶像化
「パリよ、永遠に」に続いてフォルカー・シュレンドルフのこの作品を鑑賞。
この作品に出てくる少年ギィ・モケはパリの通りやメトロの駅名にもなっているほどの、フランス人にとってはイコン的な存在。しかし、映画のように静かに死を受けいるれることが、はたして17歳の少年にできるだろうか。
他の犠牲者たちの描写にしても、あんなに誇り高い姿で処刑に臨むことなどできるものだろうか。死への恐怖。この当たり前の感情があのように抑制できるものだったのだろうか。
私にはどちらかというと、刑を執行する側の葛藤のほうが鬼気迫るものがあったように思えた。
シュレンドルフが映画で描こうとしたのは、冷静で誇り高く逝った犠牲者たちなのだろうか。しかしそれでは、共産主義やフランスへの愛国心は人々が命を賭けるに値するものだと言っていることになる。これはナチズム同様に、思想の下に人命を犠牲にすることを賛美していることに他ならない。
映画は、冷静に死へ赴いたギィ・モケの視点から描かれている。誰でもが知っている人物でありながら、彼の内面をうかがい知ることの出来る資料としてはほとんど何も残っていないはずなのに。映画はそのような実態のよく分からない人物の視線を創り出しているということだ。偶像化された人物の視点を借りて、その偶像化の歴史を描く。まさに二重の偶像化。
映画の題材としては、戦後のモケの偶像化をモケが恋をしていた女子収容所の娘の視点から描くとか(ご本人はいまだご存命なのだ)、副知事をはじめとするビシー政権の人々の立場から描くほうが面白いと思った。
だがしかし、サルコジ政権下で物議をかもしたようなギィ・モケの偶像化に対する一つの答えを、シュレンドルフがこの作品で提示しいるとしたら、上記の私の危惧など愚考に過ぎない。我々がどれほど安易に歴史上の人物を偶像化しているかということを、映画はその画面には見えないところで教えてくれている。
奴隷になるな。
「ブリキの太鼓」のV・シュレンドルフ監督による実話戦争ドラマ。
ドイツ占領下のフランスで起きた悲劇で、17歳のレジスタンス少年
ギィ・モケの名は、パリの地下鉄駅や街路につけられているという。
1人のドイツ将校暗殺の報復にヒトラーは、政治犯として収容所に
いるフランス人150名の処刑を命ずる。その中に占領反対のビラを
配ったとして逮捕されたギィもいたが彼はまだ17歳、ナチス兵でも
この報復はやり過ぎだと反対が渦巻き、指示回避に向けて奔走する。
物語は事実を淡々と描く。ギィが想いを寄せるオデットへのキスが
叶わない現実、審判後も反論を唱える牧師、非力を嘆く副知事、と
あらゆる論者を明確に描きながら、悪の恐怖へと事態は進んでいく。
実際に彼が遺した別れの手紙(本編でも流れる)全文をあるサイトで
読んだ。これが17歳かと思うほど毅然とした訴えが述べられており、
母親に向けては嘆かないで気をしっかりと持って生きていくように、
自分の死が必ず未来に役立つよう最善を望むと切々と書かれている。
理不尽な悲劇を最後までしっかりと描いている監督の力量に感服。
(どんな声を挙げても打ち砕かれる。命令の奴隷になるな、には同感)
哀しい史実
予備知識無しで観たせいで「シャトーブリアン」っていう名前で、なんか牛肉の高級なヤツ?みたいなイメージで。
ところが、映画はそんなのんきなモノではなくて。
1941年10月に実際に起きた「ナント事件」と呼ばれる歴史上の事件を描いた映画でした。
歴史にはとんと疎いので、予備知識も無しに観ちゃったら、分かんないんじゃないかとも思いましたが、ドイツに占領されたフランスでのお話で、さすがの私でもヒトラーの独裁くらいは知ってます。
それで、この映画は、その程度の知識で充分でした。
そのくらい丁寧に描かれてます。
歴史上の事実という事で、観てて実に辛いものです。
一人のドイツ人将校が銃撃暗殺されて、その報復として150人のフランス人を銃殺にせよと命令が出てしまうという、とんでもない事件です。
私は、この事件の事すら知らず、さらにはフランスのシャトーブリアンという場所に収容所があったとかも全く知らず。
映画なので、多少の脚色はあるのでしょうけど、実際にそこに居た人たちの証言なども元にしてたり、タイトルにある「手紙」とそれを書いた少年の事は、フランスでは伝説的に有名との事で、実際にこんな事が起きたのだろうと映画を通して実感します。
それにしても、このテの戦争悲劇は切ないです。
もう、どうしようもないくらい切なくて苦しい気持ちになるものです。
3年ほど前に観た映画「やがて来たる者へ」を観た時もそうでしたけど、実にやりきれない想い。
映画の中に出て来る「命令の奴隷になるな」というセリフは効きます。
この映画は極端な史実ですが、案外普段のサラリーマン生活でも「命令の奴隷」になってるんじゃないでしょうか?
今のこの日本でも、理不尽な命令の奴隷になって人生誤ってしまう人も多いのかも知れません。
そして、案外自分自身も理不尽な命令の奴隷であり、他の誰かに理不尽な命令を課してしまっているのかも知れません。
そんな事も含めて色々と考えてしまう映画なので、特にオススメはしません。
ココロに余裕が無い時は観ない方がいいのかも知れません。
ズシーンとココロに重い映画でした。
史実に基づいた意欲作
戦時中の事実を描いた作品だそうですが、何の予備知識も無しに観ました。
理不順な報復ともいえる仕打ちですが、それに巻き込まれる人々。
戦争下では仕方ないことなのでしょう。
それらが美しい映像で描かれています。
主義主張のある者、ただ巻き込まれた者、それぞれに哀愁があります。
そんな中で、泣ける作品です。
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