劇場公開日 2014年10月4日

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「I Love You All」FRANK フランク ロロ・トマシさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5I Love You All

2014年11月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

悲しい

このコメディドラマ、「フランクという名の、四六時中お面を被ってる変わり者のバンドマンが主人公」って設定だけで、もう笑けてきますよね。しかもその役をマイケル・ファスベンダーがやるってんだから、話がどうだろうと構わない!その燃料だけで充分!となりますわな。
まあ蓋を開けてみたら、そんな単純なギャグストーリーを楽しむ映画ではなかった訳ですが。うん。

この物語というか、脚本。どういう風に練って行ったんですかね?フランクというキャラクター性がまずありきで、フランクに心酔するジョン君(ドーナル・グリーソン)が彼のバンドに参加しつつその活動をツイッターとブログで垂れ流し、ユーチューブで動画公開しちゃったことによる騒動がメインではあるんですが。
いやね、コメディであるのは変わりがないんですけど、常に不安感というか不協和音が付き纏ってて、登場人物達がずっとグラついてるというかね。破滅しかないというか。クライマックス、着地する地点に向かって常にフラフラしてる。操縦桿がしっかり握られていない不安定さというか。観ながら予見できてしまうんですよ。「コイツら絶対、収まりの良い場所にはたどり着けない」って。「間違いなく墜落するよね」的な。実際はバンド、空中分解しちゃうんですけども(例えですよ)。
これがね、なんというか、意外にも笑えない。痛々しいんです。で、誰が悪いということでもなくて。物語的にはジョンが悪者にされるんですけど、彼を責めるのは酷で。そしてフランクも悪くない。バンドメンバーだって悪いということはない。強いて言うなら、全員悪い。

んー、だから、こちらとしては“風船に針が刺さるまでのカウントダウン”を鑑賞してたんだな、てなことに後半で気付く訳なんですよね。フランクがお面を脱いで初めて素顔を見せる場面にも、カタルシスは起こらない。お面を脱ぐことこそが、この映画最大の見せ場である筈なのに。正直こんな作品、稀有ですよ。
「う~んう~ん」と唸りながら焦燥感に身悶えたい人(そんな人、居るのかしら)にはオススメの一本ですかね。

ロロ・トマシ