劇場公開日 2014年9月6日

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イヴ・サンローラン : 映画評論・批評

2014年9月2日更新

2014年9月6日より角川シネマ有楽町、新宿武蔵野館、シネマライズほかにてロードショー

繊細な天才サンローランとベルジェの愛を本物のドレスが彩る“公式”伝記映画

イヴ・サンローランは偉大なデザイナーの名前であるが、その名を冠したメゾンは、彼の生涯の恋人であり、壊れやすい天才であるイヴを支えて会社を切り盛りしたピエール・ベルジェと二人で作り上げたブランドだった。ピエール・ベルジェの視点で振り返るサンローランの物語は、既にドキュメンタリー映画「イヴ・サンローラン」があり、この映画もまたベルジェが大事に守っているイヴ・サンローランのストーリーのリプライズである。ドキュメンタリーはサンローランを亡くし、彼の集めた美術品をオークションに出した後、呆然とするベルジェのアップで終わったが、劇映画である今回は、その時点から彼がイヴ・サンローランとの出会いから別れを振り返る構成になっている。

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クリスチャン・ディオール亡き後、彼の跡を継いで21歳で偉大なるメゾンのデザイナーとなったサンローランとの出会い。フランス陸軍に招集されて精神衰弱に追い込まれた果てにディオール社から切られ、ベルジェとともにメゾンを立ち上げるまでの経緯。モンドリアン・ルックの誕生と、サンローランの創造力がピークに達した、1976年の「バレエ・リュス」コレクションの発表まで、デザイナーの苦難と栄光の歴史をサンローランの財団が所有する貴重なオリジナルのドレスの数々が彩る。極度の緊張とストレスから麻薬に溺れ、危険な夜遊びと愛人との浮気に逃避するサンローランを保護してきたベルジェ。ストーリーだけではなく映画の成り立ちからも、彼の献身的であるのと同時に支配的なサンローランへの愛情を感じる。これは息苦しいほどのラブ・ストーリーである。

驚くほど華奢(きゃしゃ)で小鳥のような細い首を持つ主演のピエール・ニネは若い頃のサンローランに生き写しだ。サンローランのブランドの公認映画にふさわしい人材である。まったく同じ時期のサンローランの物語をスキャンダラスに描いたもう一本のイヴ・サンローランの伝記映画「Saint Laurent(原題)」の日本公開も既に決まっているので、ギャスパー・ウリエルとニネの演技を比較してみたい。

山崎まどか

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