劇場公開日 2014年12月6日

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「息子を通じてムスコの多面性と人の欲望を描いた作品。」メビウス Opportunity Costさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0息子を通じてムスコの多面性と人の欲望を描いた作品。

2014年12月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

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良かった。
息子のムスコを巡って繰り広げられる愛憎劇。
男性の陰部の意味を考えさせられる作品でした。

まず描かれるのは陰部が持つ、自身の存在証明的な側面。
母に陰部を切除された息子が直面するのは社会の排他性。
男性として当然のように保持する器官が無いことで周りから受ける差別。
普段は外に出ない陰部が自身の存在を証明する大事な部位であったことを痛感した息子は人生に絶望する。
また事の切欠を作った父もその問題に直面する。
息子への罪悪感から或る決断をする父であるが。
その決断が招いた事態は彼の存在自体を揺るがし暗い影を落とす。
序盤、圧倒的に優位な立場を謳歌していた彼が見せる後半の無様な奮闘。
完全な拒絶をされた彼が自身の存在を見い出せず絶望する姿は息子の姿と重なります。

そして同時に描かれる快感発生器官としての側面。
快感を求める人間の性。
適した手段として生まれた時から備え付けられた陰部。
専用の器官を失うことで欲望は消化されず蓄積して狂おしい程に人を苦しめる。
中盤に描かれる陰部を使わない快感探究の難易度の高さと比較すると。
その手軽さに一種の危険性すら感じます。

本来の役割である生殖器官としての側面が“ほぼ描かれず”。
生殖器官としての機能を果たした結果の息子が別の側面、欲望を注視させる切欠を作る点も良かった。
具備された本来の目的とは別の目的に重きを置かれたことで生じる悲劇。
でも一度知った目的から逃れられず、知らないことには出来ない残酷さがありました。

演出も新鮮。
本能的に発せられる感情表現音のみが生かされ。
その他の発言は全て排除された本作。
表情と仕草で魅せる演技に感心する反面。
本来は声が出る部分も声が無いため、何処か白々しく見える部分もありました。
演出としては上手くいっている部分といっていない部分が半々という印象でした。

妻役と夫の不倫相手役を同一人物が演じる配役の妙もあり。
繰り広げられる話を楽しみつつ色々と考えさせられました。

息子を通じてムスコの多面性と人の欲望を描いた本作。
正直、登場人物の行動原理はかなり呑み込み難く。
特に妻の行動は刺激的ではあるが感情移入は出来ず。
話の納得感は無いが、刺激的で思考の切欠になる作品でした。
オススメです。

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Opportunity Cost