劇場公開日 2014年11月15日

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「天才(で普通の少年)スピヴェット」天才スピヴェット 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0天才(で普通の少年)スピヴェット

2018年11月23日
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鑑賞方法:DVD/BD

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幸せ

『デリカテッセン』『ロスト・チルドレン』『エイリアン4』などではダークでブラック・ユーモアに満ち、『アメリ』ではカラフルでコミカルでハートフルに溢れ、独自のファンタジー世界を創造するフランスの鬼才、ジャン=ピエール・ジュネ。
本作は後者のタイプ。

米モンタナの牧場で暮らす10歳のT・S・スピヴェットは、天才少年。
ある日、彼の発明がスミソニアン学術協会から権威ある賞を受賞。
授賞式に出席する為、大陸横断の冒険に出る…。

いわゆるロードムービーだが、フランスの鬼才の手に掛かると、あら不思議、アメリカがちょっと変わったファンタジーのような世界に。
異国人から見れば、アメリカはこうも異世界のように映るのか。
そこに、この監督らしいブラック・ユーモアも。
嫌味な先生、子供を追い回す警官…大人たちを皮肉り。
いい出会いもある。T・Sを乗せてくれた長距離トラックの運ちゃん。
映像や色彩も印象的。

冒険の末、やっと辿り着いたT・S。
授賞式ではスピーチをする。
彼が授賞式出席を決意したのは、そのスピーチで、ある事を話すのが目的で…。

T・Sは天才児によくいるタイプ。
孤独で、学校では変わり者扱いで、家族にも理解されない。
そんな自分が初めて誰かに誉め称えられた喜び。
でも、ただ自分を誉めて欲しいだけじゃない。
彼の思いは、家族に。
カウボーイの父、昆虫学者の母、女優気取りの姉。
家族の心はバラバラ。
さらに、ある事件が溝を深くしていた。
T・Sの双子の弟の死。
T・Sは授賞式のスピーチで、双子の弟の死の真相を打ち明ける…。

孤独、苦悩。
一人でいる寂しさ、一人で抱える苦しさ。
誰にも分かって貰えない、気付いて貰えない。
でも、
勇気を持って、何か行動を起こせば…。
家族なんだから。

天才児ではあるが、本当は何処にでもいる少年の成長。
普遍的な家族愛。
鬼才のピュアな本心を見た。

近大