劇場公開日 2014年11月29日

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「次第に寄生されていくなかなかの面白さ!」寄生獣 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5次第に寄生されていくなかなかの面白さ!

2015年4月29日
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鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

興奮

知的

かつてハリウッドが映画化権を獲得した名作コミック。
映画化権が日本に戻り、2部作として映画化。今作はその前編。

毎度の事ながら原作未読。
一度ハリウッドの手に渡った作品を日本で映画化なんて見劣りするんじゃないかという心配をよそに、なかなかの出来映えだったんじゃないだろうか。

突如、謎の寄生生物に襲われた高校生の新一。が、寄生生物は脳を乗っ取る事に失敗し、右手に寄生する事に。
巷では凄惨な猟奇殺人事件が発生。それは、人知れず人間社会に紛れ込んだ寄生生物による捕食だった…。

一体何者で、何処から来たのか?…という明確な説明はほとんどされない謎の寄生生物。
平凡な高校生を主役にする事で劇的に変化する日常。
いつの間にか人間社会に忍び込んでいた寄生生物の脅威。
パラサイト物はこうでなきゃ!

新一に寄生した“ミギー”のキャラがイイ。
知能は極めて高く、利己的で人間とまるで価値観が違う。某魔法少女アニメのあのキャラをちょっと彷彿させた。
人の命や感情にもドライだったミギーのあるシーンの行動。我が身の為とは言え、新一に共存寄生した事による変化だと言えよう。
好戦的な他の寄生生物と違う所がミギーの魅力の要因。キモカワな造形も?(笑)
勿論、阿部サダヲによるパフォーマンス・キャプチャー演技も。

作品によるかもしれないが、日本のCGレベルも上達したもんだ。
顔がパカ~ッと開くシーンや寄生生物の造形など、ただリアルでグロテスクだけじゃなく何だかコミック感も残し、出色。
それなりに抑えられているものの、これまで健全な作品が多かった山崎貴初とも言えるグロ描写・残酷描写。
でも最も残酷だったのは、そういう“シーン”じゃなく、母親が…という“展開”。
ドラマにスリルと見応えを深めた。

主演・染谷将太はナイスキャスティング。
当然撮影現場には居ないミギーを相手に演技する難しい役所は、若手個性派の彼でなければ出来なかったろう。
見た目ヘタレで華も無い彼(失礼!)が、次第に心身共に逞しくなっていく様は、さすがの演技の巧さで格好良くすら見えてくる。
一見ぎこちなくも見えるパラサイト演技。演技巧者が怪演を披露、特に深津絵里は不気味な存在感を放つ。
東出昌大の大根演技も今回に限ってはOK?
橋本愛はこんなガールフレンドが居たらなぁ…と素直に思わせてくれる。

日本で映画化されて良かったと思う。
ハリウッドで映画化されていたらスケールもクオリティも圧倒的だったろうが、ハリウッドは自国のコミックは敬意たっぷりに映画化するくせに他国のコミックは変に脚色する事がよくあるので、ひょっとしたら単なるB級SFモンスターホラー・アクションになっていたかもしれない。

人間と寄生生物、母と子のドラマ性。
人間とは? 生とは?…哲学的なテーマ。
この前編はまだまだ導入部的な作りだが、今後の展開に期待出来る。

前編が面白かったら完結編は劇場で観ようと思っていたのだが…
よし、観に行こう!

近大