劇場公開日 2014年8月30日

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「CMで社会は変えられる?!」NO shikahikoさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5CMで社会は変えられる?!

2014年12月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

興奮

知的

このシャシンは実録的に描かれてはいますが、当時の反軍政運動の全体像を忠実に俯瞰的に描くのではなく、一人の有能なCM作家レネの視点から全てを捉えています。
そして彼を英雄的に描くのではなく、彼を大企業の宣伝者である人間の持つ軽薄さを備えた人間として描いています。
彼は行方不明者の家族の訴えを「暗い」、野党党首の発言を無駄だとし、「NO」陣営に与えられた、たった15分のCMを制作するに当たり、チリ人としては例外的に長身の若者や金髪の女性を登場させ、一般庶民には手に入りにくいフランスパンのバゲットを小道具に使ったりします。
彼の作品は「NO」陣営の一部の幹部から酷評されます。しかし、彼の創り出した色鮮やかな虹と、テーマ曲「チリよ、喜びはもうすぐやってくる」の軽快な音楽。新鮮で明るい未来を予感させるCMが、徐々に世論に浸透していきます。
CMで社会は変えられる?!

アメリカの後押しを受けたピノチェトのクーデターによって、チリ大統領官邸であるモネダ宮殿が砲撃され、合法的な自由選挙で選出されたアジェンデ人民連合政府大統領とその側近たちが殺害され、数千人が虐殺・行方不明となり、その後人口の1割近い人々が国外逃亡したといわれるチリ軍事クーデターは、1973年9月11日に起きました。
当時16歳の僕は、その報道に強い衝撃を受け、その後「チリ人民支援運動」に参加するようになりましたが、そんな僕が受けるこの作品からの感動は、多分、あの出来事を知らない人々とは違うかもしれません(^^;

shikahiko