劇場公開日 2013年1月12日

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「主演は魅力たっぷりだが、ラストでかなり強引な終わり方をしてガッカリ。」LOOPER ルーパー 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5主演は魅力たっぷりだが、ラストでかなり強引な終わり方をしてガッカリ。

2012年12月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 前半までは、過去の自分が未来の自分と対決するという設定が面白く、どうなるのかと見守っていました。ところがラストでかなり強引な終わり方をしてガッカリ。タイムスリップものは、結末を急ぐとどうしても因果関係に矛楯をきたすストーリーになりがちです。重要なネタバレになるので明かせませんが、来年ご覧になってどう感じられたかぜひご意見をお待ちしています。

 さて、冒頭ではジョーのルーパーとしての仕事ぶりがいくつか紹介されます。そこには仕事のあと未来から送られてくる銀の延べ棒を手に入れ、その一部を換金し、麻薬と性に溺れる生活を過ごしていたのです。それはジョーがどこか心が病んでいることを暗示させていました。あとで明かされるのですが、ジョーは幼い時自分の目の前で母親を殺されて、放浪の旅の果て、未来からやってきたルーパーの元締めに拾われて、ルーパー稼業に勤しむようになっていたのでした。

 最初の転機は、親友への裏切り。
 組織の頭目“レインメーカー”は、「ループ切り」と称して、役に立ちそうにないルーパーを処分するため、ルーパー自身に30年後の自分自身の殺害を命じていたのです。それはある意味で組織への忠誠心を試す試金石でもありました。
 「ループ切り」の時は、いつものルーパーと違って、ターゲットとなる未来の自分に、金の延べ棒が背負わせてあるので、顔を見なくても一目瞭然です。「ループ切り」の後は、ルーパーを引退して、のんびりと余生を過ごすことが許されていました。しかし、それは間違いなく死刑へのカウントダウンを歩まざるを得ない人生だったのです。
 ジョーの親友は、未来から送られてきたルーパーが自分自身とわかっても怖くて殺せませんでした。ジョーは逃げてきた親友の懇願を聞き入れて匿うものの、元締めの脅迫に屈して匿ったことを教えてしまいます。
 組織は、逃げたルーパーは追わずに、その親友をリンチにかけることで、逃げたルーパーの抹殺を図りました。腕を落としたら、腕がなくなり、鼻をそいだら鼻がなくなり、最後は足を切断して、現在の自分と未来の自分の関係を、かなり残酷に描きだしたのです。
 友人を裏切ったジョーはそれなりに悩みます。でも、ルーパーでお金を貯めて、フランスで優雅な老後を過ごすことしか考えていなかったジョーは、簡単に親友を裏切ってしまったのです。ところがその「ループ切り」が自分に廻ってきたのです。ジョーは迷わず未来の自分を撃ち殺してしまいます。そこには、親友を裏切ったときと同じ、今さえ幸せならばという現在のジョーの刹那に生きる考え方がそうさせてしまったのでした。
 ここからストーリーはややこしくなります。
 未来を失ったジョーは、次第に麻薬に溺れていき、中国へ渡ります。そこで悪行三昧を重ねながらも、身も心もボロホロに、そんなジョーを救ったのがひとりの女性の愛でした。ジョーは女との出会いで人間らしさを取り戻していくのでした、つかの間の平安を中国の暮らしで掴んだジョーでしたが、謎の集団が襲ってきても女を殺害しも自らを拉致して、ルーパーに送り込もうとします。
 30年前に一度体験していたジョーは、敵の気勢をそいで、自らタイムマシーンに乗り、自分を救った女が殺されないよう運命の修正に立ち向かっていくのです。まんまととルーパーをしている過去の自分をノックアウトして、逃走に成功。現代に、現在の自分と未来の自分が同居するという特殊な状況を生み出したのでした。

 映画を見ているときは疑問に感じなかったのですが、現在の自分と30年後の未成の自分との間で無限にループが形成されていて循環しているものの、時々の選択の違いによって未来が変わっていくというのがこの作品の世界観にあるようです。
 だから殆ど明かされないジョーの過去のループが重要な伏線となって、ジョーは自ら自身のループを断ち切ろうとするわけなんですね。どうもループのシステムの説明が不足しているのではないかと感じました。

 それにしても、未来のジョーは愛する女を助けるため、現代でまだ子供だった“レインメーカー”を見つけて殺そうとします。そこで根本的な疑問として、未来のジョーは全てを知っているのだから、絶対に“レインメーカー”は殺せないはず。そこが本作に感じた最大の疑問となりました。

 未来の自分から事情を聞かされても、現代のジョーは執拗に未来の自分を殺そうと追いかけるのも疑問です。いくら殺さないと組織に殺されるという共感や、夢のフランス暮らしがちらついていたとはいえ、真剣に考えた上でそんな理由で未来の自分自身を殺せるものでしょうか。
 最後には共闘して組織に立ち向かっていくのかと思いきや、子供時代の“レインメーカー”を前にして、ショーはあり得ない選択をして幕引きをしてしまうのでした。それで解決し得たのかどうかも疑問に残ります。

 30年後の自分に年代ごとに変化していくシーンでは特殊メークが使われて、見事にジョセフ・ゴードン=レヴィットがブルース・ウィルスに変化していくところが描かれていました。現在のジョーにもメーキャップが施されていて、どことなく似せてあるそうです。
 年少時のトラウマを抱えて虚無的に生きるジョーの複雑な表情をジョセフが好演していました。ブルース・ウィルスは本作でもアクションシーンが僅かしかなく、老体にむち打つなら引退した方がいいんじゃないという出方。

 ルーパーの組織が、未来のジョーによって、あっけなく殲滅されるところも物足りません。もっと重力級のアクションが用意されていた方が見栄えがしたのにと思えました。

流山の小地蔵