劇場公開日 2013年3月15日

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「超現実的に表現しようとして結局テーマは口で言っちゃってる」クラウド アトラス 13番目の猿さんの映画レビュー(感想・評価)

2.5超現実的に表現しようとして結局テーマは口で言っちゃってる

2014年5月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

一言で言えば、ありふれたことをものすごく思わせぶりに表現してる作品です。

原作者は村上春樹の影響を受けているということなので、恐らく『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』や『ねじまき鳥クロニクル』みたいなことをやりたかったのでしょうが、未だに何を描かんとしているのか読者を困惑させ続けているかの作品に対し、時代を越えて繋がっていく人のカルマと意志や想いを描こうと試みるはずの作品が、マトリックス三部作でファンたちの顎の骨を外さんばかりに驚愕させた「それでも諦めずに続けることが大事」というウォシャウスキー的テーマに組み込まれ、果てしなく凡庸な話に徹底しています。また手塚治虫の火の鳥のように、同じ人間が時代を超えて出会い続けるという構造も意味があるとは思えません。というか、原作にこんな描写あったんですかね?近未来編のクローンの女性とジャーナリスト編のデブの外国人労働者が同じ役者である必然性は少なくとも皆無です。またマトリックスで見せたウォシャウスキー姉弟お得意の無駄に長いセックス描写も悪い意味で特徴的です。長いセックスに何を投影なさってるのか意味不明でなりません。

ねじまき鳥にある壁越えという非凡な飛躍を描くには映画の二時間という尺では足りなかったのかはたまた彼らの凡庸さなのか、彼らのマトリックスで培った期待値の貯金は刻々と浪費されているので、それがゼロになる前に無駄な飛躍を望まずにエンタメに徹して欲しいと願う今日この頃です。シャマランみたいになってしまったらもう目も当てられませんから。

13番目の猿