劇場公開日 2013年8月31日

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夏の終りのレビュー・感想・評価

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1.5よくある話で平凡 これでいいのか

2013年9月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

寝られる

知子は一つの殻に閉じ込もっていられない、内に秘めたエネルギーの強さを持つ。夫と子どもがあっても好きな男のもとに走るのは、ひとりの女としてたった一度の人生を生きている証しであり、ふしだらの一言では片付けられない本能的な生きる力を感じる。

そんな知子が愛するのが作家の慎吾。妻がいて、双方を等分に行き来する生活を送る。本来書きたい作品は売れず、多くを語らず、優柔不断な男に惚れてしまうのは何故だろうと考えたところで、これは他人には分からないこと。
それに比べたら、一度は駆け落ちして別れたものの涼太なら無条件で一緒になれる。
魂そこにあらずといった風情の小林薫が上手い。綾野剛も惚れた女がいつまでたっても自分ひとりのものにならないもどかしさに苛立つ男を上手く表現している。

満島ひかりもそれなりに頑張っているが、恋愛経験の不足からか身悶えするような情念が迫ってこない。
男の妻から所要の電話まで受けるのは、屈辱ではないのか。お互い、立場を理解しているなどと綺麗事ではすまされまい。
熊切和嘉監督の演出に“張り”を感じない。
受話器の向こうで妻が曖昧な笑いをこぼすシーンが、かろうじて二人の女の間にある刺を感じさせるぐらいだ。

一緒に暮らした男と女が別れるには相当のエネルギーが必要だ。敢えて女はそれに立ち向かうのか、どうもイライラ感も期待感も募らない。
男と女の関係を描いた作品は数多あるが、当人にしか分からない激情を何の工夫もなく絵にした映画ほど退屈なものはない。
たとえ破断する恋であろうと、未来に希望がある話のほうが性に合っている。

機会があったら本を読んでみたい。

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マスター@だんだん

4.0影と、光と。

2013年9月6日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

知的

へえ、こういうのを「奔放な女」というのか。ちょっと意外な気がした。物語前半こそ、彼女は余裕綽々で、愉しげに二人の男の間を揺れ動く。長年関係を続けてきた妻子ある年上の男•慎吾と、かつて家族を捨てるほどに焦がれた年下の男•涼太と。年上の男を揺さぶり、年下の男の揺さぶりを突き放す。当然、そんな蜜月は長続きしない。相手は己れとは違う意思を持つ生き物だ。いつしか彼女もずぶずぶと関係のもつれに身を落とし、もがけばもがくほど動きが取れなくなっていく。
格子戸から覗く慎吾の片目、食べかけのまま涼太に打ち捨てられる桃…等々、どきりとさせられる画は枚挙にいとまがない。とはいえ、何と言っても満島ひかり演じるヒロイン•知子の佇まいが印象深い。冒頭でいきなりコロッケ、続いてビスケット、蜜柑…彼女はとにかくよく食べる。たいして栄養になりそうもないものを、豪快に摘み、わしわしと咀嚼する。酒を飲み、煙草をふかすのも堂々としたもの。男たちとの関係と同様に、彼女は後ろめたさを持たない。自分に正直に、求めるままに。ときにはつらぬくのが難しくても、そんな姿勢を自ら確かめるように、力強く食べ、飲み、ふかすのだ。
そして、型染め。迷いのない、力強い手つきで鮮やかに草花を彫り出し、一心不乱に染め上げる。後半、藍の染色で手先を青くしたままの彼女は、追い詰められながらも奈落の直前で踏みとどまる。生身の男と、そして自分の欲望と、各々へ対峙する姿にぞくりとした。
陰影で始まった物語は、輝かしい光に包まれ幕を閉じる。ちょっと唐突で、戸惑いを感じるほどに。恋愛は彼女の一部に過ぎない。弄びもせず、弄ばれもせず。激動を経て平穏に至り、さらなる高みに至った彼女は、どきりとするほど美しい。

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cma