見事な娘

劇場公開日:

解説

雑誌「婦人倶楽部」連載の源氏鶏太の小説を「続・警察日記」の井手俊郎が脚色し、「いらっしゃいませ」の瑞穂春海が監督、「若い樹」の山崎一雄が撮影を担当した。主なる出演者は、「チエミの初恋チャッチャ娘」の司葉子、小泉博、杉葉子、「早春」の笠智衆、「驟雨」の小林桂樹、「乱菊物語」の北川町子など。

1956年製作/100分/日本
原題:Everyone's Sweetheart
配給:東宝
劇場公開日:1956年3月6日

ストーリー

丸の内の会社に勤める高原桐子は同僚の毛利鈴子を弄んだ男、雪村達夫に流産をした鈴子の入院費用を出させに行き、達夫の弟の志郎に会った。志郎は兄に代って詑び、費用として二万円を出すことを約束した。桐子の兄信夫はダンサーの久美子と家出をして大阪にいたが、ある日その久美子が桐子の前に現われ三万円貸してくれといった。兄を思う桐子は両親に内緒で貯金から下げて久美子に渡した。その頃、桐子の父の会社は潰れそうになり、父の耕造は桐子の貯金を貸してくれという始末。困った桐子は志郎に相談して金持の志郎の両親から足りない三方円を貸りることにした。返済方法は毎月の月給日に桐子自身が雪村家に少しずつ持って行くということにした。大阪から信夫が病気だという知らせが来た。迎えに行った桐子は信夫が久美子に捨てられたのを知った。信夫は父の家に戻った。雪村家では月一回の桐子の訪問を楽しみにするようになり、志郎は桐子を愛するようになった。桐子も志郎が好きになった。耕造の会社は潰れ、桐子の一家は家を売って引越すことになった。その小さな家に引越の日、元気になった毛利鈴子が同僚の新井弥太達と手伝いに来た。桐子の両親はもしかしたら桐子が弥太を好きなのではないか、と思ったりした。志郎は両親に桐子と結婚したいと打明けたが、母親は病気の兄や、落ちぶれた父を持つ桐子との結婚に反対した。桐子もそういう志郎の母の気持を知って志郎との交際を止めようと思うのだった。桐子が同僚の山上周子や新井弥太と映画を見に行った夜、高原家には非礼を詑びる雪村鉄太郎と栄子が現われた。鉄太郎夫妻は志郎の嫁に桐子をくれといって帰って行った。帰宅した桐子は両親からその話をきかされた。暗く閉されていた桐子の胸にぽっと灯がともった。彼女は父に、やはり志郎を嫌いになれなかったといった。そして、その胸をひとり抱きしめるように二階の部屋に上ると机の前に坐って上気した頬を静かにおさえた。

全文を読む(ネタバレを含む場合あり)

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

映画レビュー

4.0司葉子主演の娯楽作

2023年4月14日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

司葉子の綺麗で溌剌な姿がまぶしい映画というだけでなく、昭和の東京風景が見られるのも楽しめる娯楽作。
南千住のお化け煙突、国電蒲田操車場、映画館での『ベニイグッドマン物語』上映、黒電話、道端のゴミ箱などが見られるが、丸の内での避難訓練としてオフィスビル3階の窓から道路に飛び降りるのは凄い!(笑)
飛び降りたのは司葉子だし……笑笑

通勤電車で知り合った二人(司葉子、小泉博)の恋物語を中心に、桐子の父(笠智衆)の会社経営問題は金銭がらみドラマ、桐子の兄(土屋嘉男)の駆け落ちエピソード、会社同僚の妊娠問題など様々なドラマが展開するので、全編にわたって気楽に観られる映画。
ただ、序盤で「物語展開のきっかけ作り」=「金」というのが少しクドい感あり、成瀬巳喜男監督作では金銭トークが毎度でもサラッとしており「もうちょっと成瀬巳喜男みたいに描けなかったのかなぁ…」という感じだったが、原作ものなので已む無しかと思う。

司葉子デビューが1954年なので、本作(1956年)では本当に清楚で綺麗。
本作は東宝映画だが、父親が笠智衆というのが小津安二郎監督のような雰囲気を見せる。

ところどころで笑わせられるツボも散りばめられており、なかなか面白い映画であった。

今回、BS日本映画専門チャンネル【蔵出し名画座】で録画鑑賞したが、現時点で未ソフト化は勿体ない映画である。

<映倫No.2116>

コメントする (0件)
共感した! 0件)
たいちぃ

4.0結婚だけが女の幸せと侮る勿れ...  弱きを助け、強きを挫き、他人に媚びない唯我独尊の全きモラリスト映画!!

2023年3月30日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 CSの日本映画専門チャンネルの"蔵出し名画座"にて鑑賞。
 雑誌「婦人倶楽部」に連載されたサラリーマン小説の大家源氏鶏太の小説を、『殺陣師段平』(1962年版)が代表作の瑞穂春海が監督したOL人情譚。
 零細企業の経営者を父に持つ若い娘が主人公で、職場では恋に仕事にグルメにエステに青春を謳歌しつつも、近親者からの金の無心や窮状にも極めて大人な対応をし、降って湧いた玉の輿話にも之幸いにとは飛びつかずあくまで己の生き方を貫くことを大切にします。
 同監督が戦前に撮った『女の気持』(1940)は主人公とその周囲の痴情の縺れや女性の自己犠牲、打算等々、濃密な情念のドラマながら本作はそれと高コントラストとも呼ぶべき内容で、己の身の上にも周囲の悪意にも拘泥せずただただ朗らかに己が人生と倫理を奉じる姿は健気で気高くもあり、今にして思えば後に始まるNHKの朝ドラのヒロインとそのドラマのような清々しいテイストも感じられます。
 今観ても主人公の真っ直ぐさと高潔さに心が洗われるようですが、女性が"如何に良縁を掴んで玉の輿に乗るか"の思考を暗に強いられていた当時の気分では、なおのことカウンターパンチの如き爽快さを伴った作品だったのではないかと察します。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)

4.0見事な司葉子

2023年3月17日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

昭和31年の東宝作品で、当時の東京が楽しめる。
主人公(司葉子)は丸の内に勤めるOL、父(笠智衆)は小さな会社の社長だが、経営はかなり苦しそう。
兄(土屋嘉男)は女と駆け落ちして大阪にいる。
会社で倒れた同僚を世話するうちに、ある男(小泉博)と知り合う。
司葉子のキリッとした知的な美しさに惚れ惚れしてしまう。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
いやよセブン
関連DVD・ブルーレイ情報をもっと見る