巨人の星(1969)

劇場公開日:

解説

梶原一騎、川崎のぼるの同名原作(週刊少年マガジン連載)を松岡清治、佐伯徹、辻真先、斎藤次郎が脚色、長浜忠夫が演出した長編カラー動画。

1969年製作/88分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1969年7月26日

ストーリー

もと巨人軍の名選手星一徹は、自分の果せなかった夢を息子飛雄馬に賭けていた。飛雄馬は、このような父のもとで厳しい試練を堪えぬき、豪速球と正確なコントロールを身につけた。その飛雄馬に目をつけたのは不良少年チームの花形だった。飛雄馬は花形のノック・アウト打法に対抗するために、一徹の火の玉ボールのノックを浴び、花形との勝負に勝った。それから一年、花形は神奈川紅洋高校へ、飛雄馬は東京青雲高校に進学、激しいライバル意識を燃やした。だが、飛雄馬は胸おどらせて入った野球部に、期待を裏切られた。それは、だらしのないナインや監督に加え、PTA会長伴大造の七光りをカサにきた応援団長の伴宙太がのさばっていたからだ。飛雄馬と宙太は、ことあるごとに対立したが、飛雄馬の投げた一球が二人を結んだ。今まで誰も捕球できなかった飛雄馬の豪速球を宙太が捕ったのだ。やがて、宙太も野球部に入り、二人のバッテリーは万人の注目するところとなった。甲子園大会都予選が迫ったある日、伴大造が青雲野球部監督に一徹を起用した。一徹は新しい練習法を取入れ、そして出場選手を決めるため、飛雄馬らの補欠組とレギュラー組を対戦させた。結果は引分け。だがこの一戦は、青雲チームを結束させた。目的を果した一徹は、監督の座を去り、都予選を勝抜いた青雲チームは晴れの甲子園大会に発っていった。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

5.0イメージだけで知ったつもりにならない方がいい名作

2024年5月11日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

笑える

興奮

現在U-NEXTで配信されているTVシリーズを視聴しているのですが、猛烈に感動したため、こちらに投稿します。
あくまで劇場版のレビューを投稿する場ですが、本当はTVシリーズを見て欲しいです。

物心ついた時から自分の生前にこの作品があった事は認識していました。
主要人物の顔も名前も知っています。幾つかの名シーンも知っています。
どこで知ったかは思い出せませんが自然と得ていた知識です。
そしておおよその内容については、トンでも理論で誇張され、ギャグの域にまで達してしまった野球漫画であるという認識でした。

TVシリーズを視聴し始めた切欠も、笑い話のタネになればいいな程度のものでした。
ところがいざ視聴を始めると、自分がいかにこの作品を誤解し、知ったかぶりをしていた事か、まざまざと思い知らされました。

確かに、ドヤ街をオープンカーで走りまわる推定14才の花形満、
ガソリンで火をつけたボールを箸でつまんでノック、
エプロン姿でガソリンスタンドでバイトする明子姉ちゃん等々、
イヤイヤイヤと思わされるシーンは数多あります。

しかし登場人物たちが一つの事に懸命に、徹底的に取り組む姿が胸を打ちます。
様々な試練と葛藤を乗り越え、最大の敬意と全力をもって挑む好敵手との死闘。
その結果が残酷なものであっても、敗れた相手の再起を誰よりも信じ、願い、待つのもまた好敵手であるという、濃密なドラマ。この圧倒的な熱量に、そもそも野球ってそこまでしてやらなきゃいけないものなの?という根本的疑問が湧く余地はありません!!

この劇場版第1弾はTVアニメ第33話までを88分にまとめたものです。
そのため当然数々の名エピソードがカットされています。

特にTVシリーズ第1話の長嶋茂雄巨人軍入団祝賀会に乗り込む星飛雄馬をカットしたのはいただけません。個人的にはこのシーンで「あ、これ絶対名作だわ…」と確信するほどのインパクトでしたから。

また、飛雄馬の父・一徹が飛雄馬に野球を叩き込む切欠がほんのり改変されているのも気になります。
TVアニメでは一徹の妻・春江が病気で命を落とす今わの際に、飛雄馬を一流の野球選手に育て上げることを一徹に約束させます。
これが映画では単に一徹が幼少の飛雄馬に野球選手としての才能を見出したからとされています。
これでは家族をあげての悲願の夢という熱量が薄れて残念です。(どちらにしろ自身の青春を犠牲にしている明子姉ちゃんは可哀そうですが…)

後は星一徹との親子関係ももっと拾ってほしかったなと思います。
一徹と言えばちゃぶ台返しのイメージで、気難しく、ちょっとした事で直ぐに癇癪を起すイメージでしたが、実際に作品を見ると、確かに厳しいですが、愛情深く、穏和な面も持っており、時には冗談を言う気さくさもあります。
飛雄馬もそんな父を、反発することはあっても深く信頼し、愛しているのです。

映画でカットされたシーンですが、近所の悪ガキに一徹を侮辱された飛雄馬が怒ります。
悪ガキは『だってお前、普段から親父さんの悪口言ってるじゃないか』と飛雄馬の反応に驚きます。
飛雄馬は『それは俺が父ちゃんを愛している証拠だ!』と言うのです。
なにこれ?飛雄馬メチャクチャ可愛いんですけど…。

映画にあるシーンでいうと、
飛雄馬は鼻持ちならないブルジョア学校である青雲高校を受験します。
その面接試験の会場ではみすぼらしい身なりの飛雄馬は場違いであると、周りの雰囲気が暗に指摘します。そんな雰囲気の中、面接官に父の仕事を聞かれ、飛雄馬は堂々と『父ちゃんは日本一の日雇人夫です!』(媒体により音声カットされています)と告げます。
面接をしている大人たちは大笑いしますが、飛雄馬はそんな反応が返ってくることなど先刻承知です。それでも自分の父を誇り、胸を張る飛雄馬の姿に感動です。

このように特異な環境ではあるものの親子二人三脚で巨人の星を目指す二人の姿はこの作品の序盤の大きな魅力の一つだと思います。

映画は幼少期・ライバル花形との出会い~高校入学~盟友・伴宙太との出会い~万年一回戦敗退の野球部を甲子園出場校へまでに作り変え、甲子園出場を勝ち取る過程がダイジェストされており、繰り返しになりますが、本当に数々の名シーンがカットされているため正直物足りません。それでも☆5をつけるのはTVシリーズの視聴をお勧めするためです。

もし未視聴で興味はあるけれど中々踏み出せないのであれば、大丈夫。安心して飛び込んでください。名作です。

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モアイ
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