劇場公開日 1985年7月20日

「慰霊という行為にみる人間性」ビルマの竪琴(1985) REXさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0慰霊という行為にみる人間性

2018年3月12日
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怖い

悲しい

無造作に放置された死体からは、人間だったという痕跡が、まるで感じられない。
一人一人に思考があり、感情があり、唯一無二の存在だったことさえも、そして各々に人生があったことさえも、尊厳のかけらもなく放置された肉片からは、全く感じられない。

そんな無情さと、自然における人間の小ささと、大きな世界の片隅で殺し合っている行為の虚しさが、胸に迫ります。

ビルマ人にそっくりの日本兵が、ビルマの僧侶のふりをして、巡礼の旅に出る。

彼が供養したところで、何かが救われるわけではないけれど、それでも供養せざるをえない気持ちになるのが人間なのでしょう。
例え彼の名前が後世に伝わらなくても、ビルマという地で誰かが戦死者を供養した、という痕跡が残ることで、後世誰かの救いにはなるかもしれない。
日本式の納骨にその思いが込められている気がしました。

罪を贖うかのようにさすらう水島は、どこへたどり着くのでしょうか。切なさが込み上げます。

REX