雷雨(1934)

解説

ウラジミール・ペトロフのトーキー第二回監督作品で、ロシア演劇の父と言われるアレクサンドル・オストロフスキーの名作戯曲を監督者ペトロフ自ら映画脚色に当っている。出演俳優はチホンに扮するI・チュウェレフを除けば凡て国立ドラマ劇場の名優連で、女主人公を勤めるA・タラソワはレニングラード劇界での人気女優、V・O・マッサリチノワ、E・P・コルチャギナ・アレクサンドロフスカヤの二老女優はソヴィエト劇壇の至宝と称される人々で其他「人生案内」のジャロフ、サルビーナ、ツァレフ等という顔ぶれである。撮影はウィアチェスラフ・ガルダノフ、作曲はウラジミール・シチェルバーチェフが夫々担当。

1934年製作/ソ連
原題:Thunderstorm Greza

ストーリー

十九世紀の初め頃。ヴォルガの流れに臨むカリノフという田舎町。町の豪家カバノフ家では当主のカバニーハ老夫人の息子チホンと美しいカテリーナとの結婚式の当夜である。強慾なカバニーハは嫁の持参金目当てに結婚を許したのだが、持参金が仲人ディコイの嘘だと解ると早くも不満を洩した。ディコイも町の豪商で強慾非道にかけてはカバニーハにも劣らぬ曲者、暗愚なチホンに嫁を押しつけ、カバノフ家の財産との連絡を図っている。十字架を負う者はチホンであったろうが、彼よりも酷く踏み躙られた者こそ、カテリーナだった。処女の美しい憧憬の夢は結婚初夜にして矇眛なチホンの為に破られ、続いて来たものは古い環境と当主カバニーハの不断の圧制だった。しかも宗教に生きる事しか知らぬ無智なカテリーナはそういう絶望の中から自らを救い出すことは思いもつかない。チホンの妹ワルワラはカテリーナを連れてディコイが経営する商品館に買物にやって来る。番頭クドリヤーシは品物を誤魔化してワルワラの機嫌をとる。何者にも束縛されることのないクドリヤーシとワルワラは気の合った同志の恋人達であった。折柄この商品館に都の若紳士が訪れた。カテリーナは一眼見て心惹かれ、また若紳士も都にも少いような美しいカテリーナを見染めた。若紳士はディコイの甥のボリスで、コレラで不意に両親を失い、この叔父に遺産が托されてあるのを受取りに来たのである。併し強欲な叔父は取り合わず、店で働くなら月給はやろうと突放す。教会の鐘が鳴り渡る休日は人々が家族打揃って街頭に出て遊ぶ日である。ワルワラと手を組んだカテリーナが、ボリスと行きずりに眼と眼を見合せ、お互いの心に衝撃を受けたその時、不意にヴォルガの空を黒雲が覆い烈しい雷鳴が轟いた。カテリーナの恐怖の叫び声は神を怖れる心の叫びに違いない。ワルワラはカテリーナの心の秘密を知った。チホンが商用で数日留守となる機会に、彼女は自分とクドリヤーシとの逢引の序でカテリーナとボリスとを引合せる。しかしこの二人は互いに心で思うだけでその思いを口に出す事も憚かられ、ただ会って淋しく別れるだけだった。数日が過ぎ教会の祈りの後で再び烈しい雷雨が襲った。カテリーナはそれを自分の罪に下された神の裁断と思い我を忘れて町の人々の前でボリスと散歩した事を告白する。夫の留守の時は窓外を見ることさえ禁ぜられている掟の前に、彼女は当然厳罰を受けなければならない。カバノフ一家はカテリーナの処分に就いて相談する。死を免れないカテリーナは亡き母の懐ろに身を沈める思いでヴォルガの流れに最後の安息を求めるほかはないのだった。

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