男たちの挽歌のレビュー・感想・評価
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まさに仁義なき戦いのリメイク。
音楽といい、ストーリーといい、正に仁義なき戦い。僕は仁義なき戦いシリーズの作品は全て(それも何度も)観ているが、まるで香港版リメイクのようだ。マーク役が格好良かった。ホーの弟が何故兄のことを理解してやれなかったのかだけが引っ掛かった。
香港ノワールを味わう
レスリー・チャンを世に出した映画というので鑑賞。
裏切りだらけの香港マフィア社会で仁義を重んじるのは結局、主人公のホーとその弟分マークの二人だけ。ホーはテッペン近くまで登り詰めていたが、ホーが溺愛する無垢な弟は学問を究めるよりも刑事を志し、父親はホーに足を洗うよう指示したため、ホーとマークに受難の時が訪れる。
ドンドンパチパチ、山ほどのスローカット、哀愁を帯びた劇伴。「太陽にほえろ」から「西武警察」のような分かりやすい演出がイイ。映画としては黒澤作品、西部劇映画の流れ。(日本の任侠映画はリンチシーンがもっとイジイジしていそうでほとんど見たことがないので分からない…)
チョウ・ユンファとレスリーにスポットライトが当たったようだが、それに負けないくらい、ホー役テイ・ロン(長塚京三似ですね)の苦悩の滲む演技も味わい深い。エミリー・チウも可愛いかったし。
あとは、邦題も、原題より作品を語っていて、凄いと思った。
なにかを犠牲に何かを得ようとするキャラクター、そして編集が印象的。
○作品全体
キャラクター(俳優)を見せたい、という表現は色々ある。そのキャラクターを画面に映す時間を増やすというのもそうだし、そのキャラクターを様々な舞台に配置するのもそうだ。音楽で演出することもできるし、特徴的なカメラワークで魅せることもできる。
本作は、メインキャラクターを見せるための編集が印象的。シーンとシーンのつなぎ目を省略することで、キャラクターの所作にフォーカスを向けさせる。そういった意図を感じた。
序盤で印象的だったのはホーが父に会いに行くシーン。キットと父のいる病院で合流し、キットの彼女も交えて談笑する。そこはコメディとも言えるくらい陽気で明るい空間だが、カットを割ってホーと父だけのシーンになると一転、悲しげなBGMとともにホーの生業に釘を刺す父。カットごとのテンションのアップダウンが激しすぎて驚いたが、ホーのもつ「親しみある兄」という顔と「極道に生きる男」という二面性を強調することもできる。
ドラマを描く、という視点からすると、間に心象風景を挿入したり、ホーの感情のグラデーションを作る緩衝材のようなカットを挟んでも良いのではないか、と感じるが、キャラクターを描く、という意味では強い印象を残す演出だった。
マークに関してはもっとエッジが効いていた。ホーの仇討ちをしたあとから3年間、マークがなにを考えていたのか、という部分に関しては画面内では映すこともなく、ホーに「待っていた」と告げるのみ。ホーの「取り戻したい」という感情だけを鋭利に研ぎ澄ましたように、カメラもその姿だけを映し続ける徹底さが面白い。
たばこを加える仕草、ホーを見つめる目、足を引きずるシルエット。こうした所作をどれだけ魅力的に見せるか。そのためにあるシナリオ、そして編集だったと思う。
ホーもマークも、そしてキットも、なにかを失ってなにかを得ようと足掻く「男たち」だ。この作品自体もシーンとシーンとの「間」を犠牲にする代わりに、キャラクターの魅力を際立たせる。それぞれが失うことを選んだ決断と一本気なスタンスが、まさしくハードボイルド。そんな作品だった。
○カメラワークとか
・マークがホーのかたきを討つために楓林閣へ乗り込むシーンがかっこよかった。ゆっくりとドアを開けて現れるサングラス姿のマーク。その空間に馴染まない姿が、ゆっくりと浮かび上がってくるような黒の姿がとても良い。
本作は銃撃戦のスローモーションよりも人が現れる、いなくなるときのスローモーションが一番かっこいい。シンがホーと口論して、シンと会うのが最後になるシーンとか。
・マークがフィルムを奪いに行くシーンの冒頭は地下駐車場のど真ん中をゆっくりと歩いていくシーンから。ここのシーンだけは明確にシーンとシーンの「間」があった。マークへの花道を作ってあげているような感覚。
○その他
・どうしてもいろんなところに古さを感じてしまう。かっこいい古さであれば良いんだけど、シンセっぽいBGMとかはむしろトレンディっぽくて、世界観が軽くなってしまう印象。序盤の関係性を示すシーンも作為的な芝居やセリフが多いのもそう。
・終盤、マークがボートに乗って引き返してくるところが一番好きだ。一人逃れたところでマークの臨む「取り戻す」は取り戻せない。そう気づくまでの時間と、気づいた後の腹をくくった表情。マークというキャラクターに踏み込んだ芝居だった。
・2丁拳銃かっこいいなあ。チョウ・ユンファのポージングもかっこいい。黒の外套、黒のサングラスとの相性もいい。
男たちのヒロイズムの極み
この手の映画への偏愛は理屈じゃないとしか言いようがない。
親友としての絆、兄弟、肉親の絆、そして足抜けさせてもらえない裏社会の呪縛が描かれる。
兄弟、親友、これらの絆がなければ彼らはもっと楽に生きられたかもしれない。
でも、誇りを失って生きるのは嫌だとマークが言うように、絆や誇りを失えば人は生きるために必要な何かを失うのだろう。
ホーの耐える男のヒロイズム、マークの滅ぶ男のヒロイズム、この二人の個性の差が堪能できる。ボートのUターンからのチョウ・ユンファの男っぷりがたまらない。あそこからずっとヒロイズムの極み。
そして見過ごせないのはホーでもなくマークでもなくキットでもなく、タクシー会社の社長の真っ当な道を選び続ける生き方のかっこよさ。いろんな男たちのヒロイズムを堪能できる贅沢な作品
切なすぎる
DVDも持ってるが映画館で観るのは初めて。今までは派手なガンアクションと、ホー兄弟の葛藤にばかり着目していたが、今回はなぜか、マークの根無し草ぶりに目を奪われた。
"Better Tomorrow"(英題:よりよい明日)とは、ホーとキットにとっては難しくても現実の願いだが、マークにとっては「當年情」(ED曲:あの頃の想い)をもう一度取り戻すことであり、ホーの気持ちを考えればそれが実現しないことも分かっている、それでもそれしか人生を賭けるものがないというやるせなさ。
駐車場での再会から先、マークが出るたびに泣いていた。名作。
かっこよ
何十年ぶりに観てみました!
プライムビデオありがたや〜
私が20歳頃、『誰かがあなたを愛してる』という映画のチョウ・ユンファに夢中になってから見た作品。
ラブストーリーからの、『香港ノワール』にぶっ飛びました。懐かしい、懐かしすぎる。
男たちの挽歌を見てから、続編〜最終章、とにかく全部見た。
今みたいに、DVD1週間いくらという時代でも無く、ビデオテープを借りて、一晩300円くらいだったか、とにかくビデオ屋に通った。
今日久しぶりに観ると、チョウ・ユンファよりもティ・ロン。レスリー・チャンがかっこいいじゃないか??
でも当時の私には、とにかくチョウユンファの2丁拳銃ぶっ放す、マッチをくわえて笑いながら、植木鉢に拳銃を隠すシーン、最後の一度はボートで離れるも、また戻ってホーを助けに行くシーンも、しびれっぱなしで。
また色々見たくなりました。
『男たちの挽歌II』はまたチョウ・ユンファが出てきて、香港ムービーって、何でもありだな!と思ったのよね(笑)
男の血が滾りだす!
"男たちの挽歌" シリーズ第1作。
DVD(デジタル・リマスター版)で鑑賞(吹替)。
言わずと知れた香港ノワールの金字塔。今となっては見慣れた演出ばかりですが、本作が原点であることを忘れてはなりません。偉大な作品と云うことを骨身に染みて感じました。
チョウ・ユンファのカッコ良さにしびれまくりでした。ジョン・ウー監督ならではの熱い男の友情、兄弟愛、その果てに待ち受けていた二丁拳銃アクションが堪らなかったです。
※修正(2023/09/02)
とてもよかった
2回目、今回はシリーズを通して見ようと思った。廊下の植木鉢に拳銃を忍ばせるのはクライマックスかと思っていたら序盤だった。あそこが印象深いのだが、クライマックスの銃撃戦も凄まじかった。
ハゲの弟と弟の嫁がイライラさせる。特に嫁は、自分の誕生日に自分ででかいケーキを用意し、お祝いを強制するようなうざさだった。弟は捜査から外されたり、兄がヤクザだったりでてんぱってんのに一切考慮しない。どうしようもない女だ。
偽札のテープをなぜ警察に持っていかないのだ? 埠頭に素で行ったらすんなり銃殺されて終わりじゃん、などそうはならなかったが見ていてチグハグな感じがした。
チョウ・ユンファが劇団ひとりに見えて仕方がなかった。
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