劇場公開日 1976年3月13日

「アル・パチーノ独壇場の熱演❗」狼たちの午後 kazzさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0アル・パチーノ独壇場の熱演❗

2019年3月31日
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鑑賞方法:映画館

シドニー・ルメットの演出の視線はドライで、リアルだ。

この事件は、犯人が人質の体調に気遣いを見せたり、警察権力への批判を叫んで路上の野次馬たちから喝采を浴びたりして、テレビを通して全米の注目を集めたらしい。

ルメットは、ほとんどを現場である銀行の扉の内と外を舞台に、刻々と発生する事象を捉え続けている。
演者のアドリブに任せた部分も多かったと聞くが、臨場感のあるリアルな演出で見せる。
この愚かで滑稽な犯罪者を、敢えて愛すべき人物としては描かず、ヒーロー扱いはしていない。
ストックホルム症候群を過度に描くこともしていない。

出ずっぱりのアル・パチーノは、時に激しく、時に優しく、時に情けない様を熱演している。
堀の深いイタリア系の濃い顔立ちに汗を滴らせたアップは、実に魅力的だ。

サル役のジョン・カザールの自閉症的演技も評価されている。
が、この当時の名バイプレイヤーの一人、モレッティ刑事役のチャールズ・ダーニングの巨体を揺らした力演は見逃せない。
なんとか無事に事件を収束させようと熱を振るうのだが、全てFBIに持っていかれてしまう。
ここも、市警とFBIの指揮権争いなどのドラマは描かれず、FBIの指揮官が表に出るとモレッティ刑事は登場しなくなる。
事象だけをクールに見せるのだ。

FBIの冷酷で手際のよい作戦で、悲惨な結末となるが、人質たちは犯人たちの末路を冷静に見つめていて、決して犯人たちと心を通わせていた訳ではないんだと理解できる。

映画のモデルとなった実際の犯人は20年服役したそうだが、映画の収益が配分され、恋人はその資金で性転換手術を受けたというのも、嘘のような本当の話だそうだ。

kazz