劇場公開日 1998年7月18日

「原作越えどころか原作評価すら爆上げさせる、犯罪映画の金字塔 ver.2」L.A.コンフィデンシャル なおさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0原作越えどころか原作評価すら爆上げさせる、犯罪映画の金字塔 ver.2

2019年9月14日
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鑑賞方法:映画館

原作含め<LA四部作>既読。
公開初日の日比谷など劇場で3度観たが、観れば観るほど評価が上がっていった。
何と言っても原作の長く複雑に交錯するプロットを上手に整理し、さらにクライマックスにむけてグッと盛り上げ、観客がよりおおきなカタルシスを得られるようにまとめあげた脚本が素晴らしい。原作から設定やストーリーを色々改変しているのだが、観客を馬鹿せず適度に複雑さを残した構成のさじ加減は職人芸で、良さを損なわずにかつ面白さの向上に大きく貢献している。
原作は正直なところLA4部作の中では一番下の出来という認識だったのだが、この素晴らしい映画化で原作も読み返す機会が増えて、わかりにくい点への理解も深まり評価も上がった。それにより映画化に際してどれだけわかりやすく面白くかつあの仄暗い熱情を損なうことなくシナリオ化しているかを再度認識した。『ブラック・ダリア』が失敗作だっただけに(原作は傑作なのに何してくれてんのさ)余計に。
ポスターなど各種宣材の「わかってる」感溢れるデザインや惹句なども、スタイリッシュで格好良く作品の魅力を的確に伝えてくれるものだった。

ラッセル・クロウとガイ・ピアースは本作でブレイクして主役クラスにステップアップしたし、再評価されたキム・ベイシンガーはアカデミー賞を始めその年の助演女優賞をごっそりかっさらっていったし、『ベイブ』のおじいちゃん(クロムウェル)が…だしで役者陣もしびれる演技を見せてくれる。スペイシーは…ちゃんと反省しなさい!

まったく関係ないが、クロウ扮するバドがタイピンを上の方に付けているのが気に入って、20年前からずうっと真似している。

同じ年に『タイタニック』があったため、色々割を食った作品でもあるが、たとえ記録には残らなくても必ずや記憶に残ることだろう。

あえて難癖つけるとすれば…カーティス・ハンソン、ブライアン・ヘルゲランドともその後注目していたが、本作でハードルが無限の彼方に上がってしまったため何を観ても物足りなさをおぼえるようになったことか。(『8マイル』(監督:ハンソン)、『ミスティック・リバー』(脚本:ヘルゲランド)が物足りないとか贅沢すぎ)

そして『1917』を買いに行ったはずなのに何故か20周年記念版BDがお店の棚に並んでいて目を疑う。今頃何でー? ということで公開時以来の4度目23年ぶり鑑賞。映画オリジナルであるロロ・トマシが実にいい仕事してる。うまいなー。今観ても傑作であるという考えは微塵も揺らがなかったのでちょっとホッとした。エルロイのインタビューははじめて観たのでキャッホーイ。脚色の大変さもよくわかるというか、そもそもめちゃくちゃ難易度高そうなのにこれに手を出すことにしたヘルゲランドさん最高です。故ハンソン監督とのおしどり夫婦みたいなツーカーぶりがまた。

なお